世界遺産登録から20年を迎えた熊野古道のツアーなどを手掛ける和歌山県田辺市の一般社団法人「田辺市熊野ツーリズムビューロー」が、古道を歩く人数を計測する計画を立てている。これまで人数に関するデータがないことから問い合わせに答えることができなかったという。計測数を旅行事業に生かしたいとしている。
熊野古道は古来、熊野三山の参詣に使われた道で、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産「熊野参詣道」として登録されている。中辺路(なかへち)、大辺路(おおへち)、小(こ)辺路(へち)、伊勢路(いせじ)のうち昔の姿が残る部分が登録され、和歌山、奈良、三重3県にまたがる計約210キロにのぼる。
計画では今年度中に、世界遺産登録の部分を中心に田辺市の中辺路10カ所程度で計測する予定。センサー式の機械を導入し、古道を歩く人数をカウントする。設問式ではないため、男女や国籍などはわからない。
熊野古道の人気は高まっており、古道を中心に事業展開するビューローの令和5年度の旅行事業売上高は過去最高だった元年度(5億2180万9千円)の1・68倍となる8億7602万3千円となった。外国人客が多くを占め、ビューローが取り扱った5年度の延べ宿泊者数のうちオーストラリアや欧米など約78%が外国人だった。日本人は約22%だが、古道歩きをしないとみられるスポーツ合宿が大半を占めている。
ビューローの多田稔子(のりこ)会長は今回の計測について「これまで熊野古道のどこをどれくらいの人が歩いているかという基礎中の基礎のデータがなく困っていた。観光動態がわかることは大きい」と期待し、「プロモーションや誘客に役立てることができる」と力を込める。計測箇所別に歩く人数の多寡もわかることから、古道の保全にも役立つとしている。
(張英壽)