来年4月に開幕する大阪・関西万博の会場を、取材のために幾度も訪問している。この1カ月ほどで感じるのは、全体では遅れが指摘されているものの、徐々に海外パビリオンの外観が姿を現しつつある事実だ。開幕まで残り約4カ月となるなか、各国は壁にぶつかりながらも懸命に準備を進めている。
工事中の館内を報道陣に公開する動きも出始めた。11月末にはイタリアが公開。「今後、内装工事に入ると内部を見せられないから」という理由で公開したというが、ローマ教皇庁(バチカン)と共同出展となるパビリオンは、延べ床面積が約3千平方メートルと最大級だ。木材をふんだんに使い、天井も高く、完成時の威容が感じられた。
庭園とレストランが整備されるという屋上も案内してもらえたが、海に囲まれているだけに、空気が澄んで気持ちよかった。さらに同パビリオンではイタリア側で2世紀の大理石彫刻「ファルネーゼのアトラス」、バチカン側ではカラバッジョの代表作「キリストの埋葬」が常設展示される。万博の大きな目玉になるのは確実だ。
フィンランドやデンマークなど北欧5カ国が共同で建設を進める共同館も12月上旬に内部を報道陣に公開した。まだ工事現場そのものといった様子だったが、公開したのは理由がある。フィンランドの財団公認のサンタクロースが来日して北欧館をアピールしたのだ。「トナカイはクリスマスに備えて休憩中だから今回は飛行機で来た」と言って、フィンランドの航空会社もアピールしてみせた。
「タイプA」と呼ばれる大型の海外館は、複数国が開幕時に内装や展示が間に合わない可能性があることを、日本国際博覧会協会の幹部が言及した。各国の工事スケジュールは協会が要請した時期から大幅に遅れており、なぜそのような事態になっているのかは、検証が不可欠だろう。
ただそれでも各国は、自国を世界に紹介するパビリオンを、誇りをかけて建設している。日本政府の支援を受けてウクライナも小規模出展が決まった。これだけ戦争や対立が続く世界で、立場が異なる多くの国々が一カ所に集まり、自国を紹介する。その内容を知ることの意義は、決して小さくはないと思う。
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黒川信雄
平成13年日本工業新聞社入社。産経新聞経済本部、外信部を経て26年11月からモスクワ特派員を務めた。30年1月から大阪本社経済部(現・報道本部)。