「食」を通じた健康づくりを推進している青森県鶴田町で、学校給食用のリンゴを児童たちが持ち寄る「りんご一籠運動」が令和6年度も始まった。「食育」や「地産地消」につながる取り組みとして注目され、関係者は特産品を通した郷土愛の醸成にも期待を寄せている。
栽培する祖父母に感謝
地元特産のリンゴのおいしさを再認識してもらおうと、町は平成3年、JAから購入したリンゴを給食用に提供。17年から若手農業経営者グループやPTA、町民から無償提供されるなど、全町挙げた取り組みとして支援の輪が広がった。18年からは児童が各家庭などからリンゴを持ち寄るりんご一籠運動が始まり、特産品に対する愛着の高まりに一役買っている。
昨年12月9日、町内唯一の鶴田小の児童がリンゴがいっぱい入った籠を持って登校。町学校給食センターによると約240キロが集まったという。栄養価を考えて皮付きのまま切って出しており、今年2月中旬まで毎食提供される。祖父と祖母が栽培しているというリンゴを持ち寄った5年生の八木橋奏太君(11)は「おじいちゃんとおばあちゃんに感謝の気持ちを込めて食べている」とおいしそうにほおばっていた。
後継者の育成
学校では授業の一環としてリンゴの収穫体験も実施するなど、食育にも力を入れている。
地産地消の推進をまちづくりの根幹に掲げている同町は、16年に全国初の「朝ごはん条例」を制定した。背景にあったのは、13年に町が町内3~15歳を対象に食生活の状況を調査したところ、約1割が朝食抜きだった。このため、町では地場米の消費拡大とともに朝食抜きの食生活を改善することで健康づくりを後押ししようと、条例で「ごはんを中心とした食生活の改善」や「食育推進の強化」など6項目を掲げ、朝食をとることの重要性を啓発した。
こうした同条例や学校給食へのリンゴの提供といった取り組みによって期待されるのが、児童・生徒の健全育成や生産者の顔が見えることによる食育の推進、豊富な地場産品の再発見、郷土への愛着心の醸成だ。同センターの太田有治所長は「農業は担い手が不足している。子供たちが食を通して地元の産品を再認識することで後継者の育成につながることも期待している」と話している。(福田徳行)