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深夜に押し入るも外国人店員の「反撃」で逃走… コンビニ強盗男の〝限界生活〟

産経ニュース 2024年9月18日 8時0分

「ナイフを持った人が店に入ってきた-」。今年7月、東京都墨田区のコンビニエンスストアから110番通報が警視庁に入った。外国人店員に撃退され、「強盗犯」は何もとらずに逃走したが、本所署は今月5日、強盗未遂容疑で住所不定の無職の男(57)を逮捕した。取り調べからは、生活に困窮した末、安易な犯行に及んだ経緯が浮かび上がった。

入念な準備も撃退

「まさか自分の店舗で起こるとは…」。被害に遭った「ローソン石原四丁目店」(墨田区)の50代の男性オーナーは、事件をこう振り返る。

7月23日未明、頭に白いタオルを巻き、口元をマスクで隠した男が店内に入ってきた。

捜査関係者によると、男は普段から店を利用しており、周囲の土地勘があることから「ターゲット」に選定。犯行前に、店の外観や内部の構造もしっかりと確認しており、人目を避けて客足が遠のく深夜を狙ったとみられる。

男は店内で客を装い、奥の棚からヒレカツサンド1個を手に取り、店を1周。客はおらず、店員はバックヤードに入っていて不在だった。レジ前に立った男は、満を持して呼び鈴を鳴らす。

出てきたのはウズベキスタン国籍の10代後半の男性店員。男はポケットから取り出した果物ナイフを差し向けて「金を出せ」と言い放った。

レジの中まで侵入して迫る男に対し、男性は買い物かごで応戦。バックヤードから同国籍の20代の男性店員も金属製の棒を持って加勢に駆け付け、男は何もとらずに逃走。店員らにもけがはなかった。

オーナーによると、店員2人は兄弟で、兄は就職活動中、弟は日本語学校に通っている。季節ごとの新商品の品出し準備などを手際よくこなし、「まじめで頼りにしている」(オーナー)2人が店の売り上げまで守った形だ。

失職後に極貧に転落

「生きていくためのお金がほしかった」。本所署の調べにこう供述したという男。その生活の困窮ぶりは、目を覆うばかりだったようだ。

捜査関係者によると、男は平成30年末ごろから住んでいたアパートの家賃を滞納し、電気、水道、ガスなどのライフラインも順次止められていった。倉庫関係の仕事に従事していたが、令和3年末には人間関係の悪化を理由に退職した。

収入源を完全に失った男だが、四畳半のアパートに家賃を滞納したまま契約が切れた後も居座り続けた。止まったライフラインについては「廊下の電気ケーブルを引き込んだり、共用の水道を使ったりしていた」(捜査関係者)。

日々の生活費は、持っていたゲームソフトを売り払って捻出していたが、売るものがなくなると、近所の焼き肉店の裏手から肉の切れ端を盗んで食べるなどしていたという。

そんな生活は長続きしない。追い詰められた男は「たばこを吸ったり、酒を飲んだり、好きなものを食べたりしたい」。欲望に駆られ、ついに強盗を決意するも、あえなく失敗に終わった。

懲りない男は8月3日、墨田区内のドラッグストアで粉末飲料を万引きしたが、防犯カメラ画像で犯行が発覚し、すぐに窃盗容疑で逮捕された。逃げられないと悟ったのか、取り調べではコンビニ強盗未遂への関与も自供し、再逮捕されるに至った。

取り調べに対し「手っ取り早くお金が取れると思った」と話しているという男。署はほかにも窃盗事件などに関与していないか、慎重に調べている。(宮崎秀太)

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