江戸前ノリの一大産地として知られる千葉県富津市で4日、養殖網にノリの胞子をつける「種付け」が始まった。養殖網が何重にも巻き付いた巨大な水車がぐるぐると回転する様子は、秋の風物詩。東京湾の海風に育まれたノリの収穫は、11月に始まる予定だ。
同市小久保の大貫漁港では、朝から大佐和漁業協同組合員たちによる種付け作業が行われた。ノリの胞子が付いたカキ殻を水槽に浸し、青や緑の網を張った直径約2メートルの水車を回転させ、網の目をくぐらせていった。
作業済みの網は別の水槽に移して、胞子に芽を出させ、冷凍保存。海水温が下がる10月に船で沖合に運ばれ、順次海に張り出される。
東京湾のノリ養殖は近年、不作が続いている。温暖化による海水温の上昇などが原因と考えられるという。同漁港の平野竹雄組合長(76)は「今年もやってみないとわからない」と不安をのぞかせながらも、「香りも味も良いのが、富津のノリの特長。多くの人に食べてほしい」と話した。(松崎翼)