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偉大な兄、不利な体格 それでも「限界を超える」 バレーボール石川真佑、次のエースへ

産経ニュース 2024年8月4日 21時44分

「成長とは常に限界を超えたところにある」。バレーボール女子の石川真佑(24)はこの言葉を道しるべにしてきた。4日の女子1次リーグでは日本の敗退が決定。主将でエースの古賀紗理那(28)は今大会を最後にユニホームを脱ぐが、4年後の大黒柱と目される小さなアタッカーは、さらなる高みを目指して歩み続ける。

兄の男子主将、祐希(28)が高校卒業まで地元・愛知にとどまったのとは対照的に、小学校卒業とともに親元を離れた。全ては日の丸を背負い、五輪のコートに立つため。成長するため、何度も限界を超えてきた。

祐希と同じくきょうだいのプレーに興味を持ち、地元・愛知県岡崎市でバレーを始めた。「強豪校でやりたい」と、母と東京や大阪の学校を見て回り、練習が厳しく指導者が生活の面倒も見てくれる長野市立裾花(すそばな)中に越境入学。指導した今井一仁さん(58)が自宅を改造した寮で共に3年間過ごした。

「倒れるまで練習していた。『つらい』という言い訳や限界を設定しないのが真佑」と今井さんは振り返る。

全国大会で2回優勝し、強豪校からオファーが舞い込む中で選んだ進学先は下北沢成徳高(東京)。裾花中は低いトスで速く攻撃する連係が持ち味だったが、高いトスから個の能力で押し切るチームを選んだ。成長するための「変化」を目指したからだ。背景には、2つの理由があった。

1つは2年連続で春高バレーなど3冠を果たした兄、祐希。「日本バレーボール界の至宝」と称される兄を尊敬し、「兄のようにアタッカーでやりたい」。その思いは一歩も譲らなかった。

もう1つは174センチという身長。高校で伸びず、指導した小川良樹さん(68)は「他の選手ならセッターを勧めたが、真佑は『高いトスでも打ち切ってみせます』と言い切った。意欲が違った」。高さが求められる競技には不利な体格ながら、2年目にはアタッカーの基準として課された到達点3メートルを超えた。

石川らしいエピソードがある。全国大会決勝の翌日、左足かかとを疲労骨折していた。バレーボールでは「ありえない」、低身長をカバーするための踏み込みの強さの表れだった。「そこまでやるんだ、真佑はね」

パリ五輪での8強入りはならなかったが、真鍋政義監督は「才能は(主将でエースの)古賀に匹敵する。次のロサンゼルス五輪の大黒柱になるべき存在」と期待する。小さなエースが率いる「東洋の魔女」の復活を、国民は待っている。(五十嵐一)

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