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こだわりの麺と向き合う求道者 つけ麺繁田(神戸市灘区) もっと勝手に美食倶楽部

産経ニュース 2024年8月10日 8時0分

3カ月前から住み始めた神戸でおいしいつけ麺を食べられる店がないか探していたところ、新在家にある「つけ麺繁田」が「うまい」との噂を聞きつけ、休日の昼食どきに足を運んだ。年季の入ったのれんが掲げられた店頭には既に7組の客が並んでおり、ようやく店に入ると、厨房(ちゅうぼう)に、黙々と麺と向き合う店主の繁田直幸さん(36)の姿があった。

繁田さんがつけ麺にのめり込むきっかけは、約10年前。つけ麺好きの弟と2人で訪れた千葉県内のラーメン店で食べたつけ麺に衝撃を受けた。3時間も並んだことを忘れるほど、感動するような味だったという。

その後も、その味が忘れられず、弟を誘って地元の三木市内でラーメン店を開店。お互い素人同然だったが、県内や関東の有名店に何度も足を運んで、つけ麺を研究。実家のずん胴鍋を使って試行錯誤した。

平成27年12月、弟とともに現在の「つけ麺繁田」を開店。その後、「他にはないつけ麺を」という信条をもとに、妥協を許さないつけ麺作りが話題を呼び、関西屈指の人気店になった。

看板メニューは、5種類のトッピングを添えた「特製つけ麺」。うどんのように太い、角ばった麺が盛り付けられ、スープの香りが食欲をそそる。

店長のおすすめの食べ方に従って、最初は麺を何もつけずに口へ運ぶ。小麦の甘みが噛むごとに口の中に広がり、小麦のほのかな香りが鼻腔を抜ける。

「麺が主役」との考えを持つ繁田さんは、小麦の種類、水と塩の分量、小麦を挽く製粉の仕方の違いによって、味の違いが無限に広がる麺の奥深さに魅せられたのだという。

今使用している麺は、北海道産や兵庫県産の小麦など産地の異なる5種類の小麦を配合。小麦の皮を炙って粉末にしたものを混ぜ、豊かな風味を引き出す一手間をかける。

次に、スープに麺をくぐらせる。麺に絡みつくスープは濃厚そのもので、魚介とんこつをベースに鶏の足(もみじ)や煮干しを使って味をととのえているという。トッピングには、低温調理した宮崎ポークと兵庫県産の鶏むね肉に、明石産のノリを添える。あえてトッピングの味は薄めにして、麺やスープの味を引き立てる工夫をこらす。

人気店になった今も小麦の配合からトッピングの産地まで「おいしいものが見つかれば少しずつ変えている」といい、「つけ麺は勉強し、研究すればするほど味で応えてくれる」と話すその姿は、まさに、つけ麺の求道者のように思えた。

(西浦健登)

神戸市灘区桜口町5の1の1ウェルブ六甲道5番街1番館103。阪神電鉄新在家駅から徒歩4分。営業時間は、昼が午前11時~午後3時(ラストオーダー)、夜が午後6時~9時半(同)。月曜、第2、4火曜日定休。

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