比叡山延暦寺(大津市坂本本町)と麓の坂本をつなぐ国内最長2025メートルの坂本ケーブルと地元・坂本小学校のコラボで、児童が描いた絵のステッカーを窓に貼ったケーブルカーが運行している。車内放送も児童が担当し、坂本駅には児童が作製した顔出しパネルも設置している。地域と協力して地元を盛り上げる「学校夢づくりプロジェクト」の一環で、昭和2年に開業した坂本ケーブルでは初の試み。乗客の評判は上々という。コラボケーブルカーの運行は昨年12月17日に始まり、3月24日まで。
顔出しパネルも登場
ステッカーの絵は、坂本小学校のキャラクター「サカえもん」「モトひめ」を素材に1~6年の全25クラスが描いた。ケーブルカーや小学校の校舎を背景にするなどデザインはさまざま。「縁(えん)号」「福号」の2台あるケーブルカーの窓に貼ってある。1枚1枚、じっくりみるとおもしろい。
車内放送では、児童による観光案内も兼ねた2分間のスポット放送が毎回流れる。
また、坂本駅には「サカえもん」「モトひめ」が駅員として迎える顔出しパネルも設置した。作製した同小の「企画JRC委員会」(児童会)の勝田愛寿(あんじゅ)さん(6年)と本田楓さん(5年)は、「地域を盛り上げようと作った。うまくできた」と満足げに話していた。
日吉大社なども候補に
評判のいい今回の坂本ケーブルとのコラボだが、すんなりと決まったわけではない。
今年度の「学校夢づくりプロジェクト」を担当した同小の寺町美紀教諭によると、同委員会ではさまざまな意見が出たという。
コラボ対象の候補として、比叡山の麓に鎮座する全国3800余の日吉、日枝、山王神社の総本宮・日吉大社(大津市坂本)や、比叡山延暦寺の門前町として栄えた坂本に点在する高僧の隠居所・里坊の一つ、旧竹林院(同)などがあがった。
また、コラボではなく、地元のマンホールの蓋を「サカえもん」「モトひめ」のデザインにするというアイデアもあった。
坂本ケーブルとのコラボ決定後も「サカえもん」「モトひめ」のラッピングカーにするという意見もあったが、いずれも予算の関係でかなわなかった。
坂本のよさ見つけて
「『子供の車内放送、いいですね』という乗客の声も聞いた。ステッカーもほのぼのとして、評判がいい」と坂本ケーブルを運行する比叡山鉄道の西田陽一取締役は言う。そして、「坂本はいい町なのに知名度がまだまだ低い。地域の子供とのつながりを深め、協力して地元を盛り上げるいいきっかけになっている。こんなコラボケーブルカーでぜひ、比叡山へ登っていただきたい」と話していた。
同小の上畠憲一校長も、「歴史あふれる坂本のまちのすばらしさをアピールできるコラボとなっている。ぜひ、坂本ケーブルに乗っていただき、児童の取り組みと坂本のよさを発見してほしい」と期待を込めた。(野瀬吉信)
◇
学校夢づくりプロジェクト 大津市教育委員会が令和3年度から始めた取り組みで、子供の思いをもとに、地域・学校が力をあわせて創意工夫を凝らした夢のあるプロジェクトを実施し、児童・生徒が主体的に学び、心豊かに生きていくことができる力の育成を目指している。