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〝仲間〟悼む強い思い 各地に殉職者や警察犬弔う施設 警視庁150年

産経ニュース 2024年11月13日 7時0分

警視庁には、事件や事故、人命救助などに当たり、職務中に命を落とした警察官を慰霊する施設がさまざまな場所にある。殉職した警視庁などの職員の霊を弔う「弥生慰霊堂」(千代田区北の丸公園)のほか、警視庁本部や警察博物館に殉職者に思いをはせる場所を設けている。危険と隣り合わせの職務ゆえ、苦楽をともにし、不幸にして命を落とした仲間を悼む思いは強い。(大渡美咲、内田優作)

《崇高な使命に殉じ尊い礎石となった人々が六百二十一名の多きにのぼることをわれわれは忘れてはならない》

警視庁本部1階のホールにある「殉職者顕彰碑」。後に法相を務めた第67代警視総監の秦野章さんの言葉とともに殉職した職員の名前と年齢が刻まれている。明治元年から100年の節目を迎えるにあたり、殉職者の功績をたたえ、後世に伝えるために建立したという。昭和44年2月に除幕式が行われた。

過激派による襲撃、凶悪犯の追跡中、人命救助…。碑には名前とともに壮絶な最期の状況が記されている。先の大戦で10万人以上が犠牲になったといわれる20年3月10日の東京大空襲をはじめとした空襲で、住民の避難誘導や負傷者の救護などに当たり亡くなった43人の名前も記録されている。

ホールでは毎年春と秋、警視総監以下職員が並び、定年退職者の見送り行事が行われる。殉職者が見守る中、退職者の代表はあいさつで、無事に定年を迎えた喜びと同時に、無念にも志半ばで定年の日を迎えられなかった同期への思いをはせる言葉も述べられる。

警察博物館(中央区)の5階にある「殉職者顕彰室」には警察官38人の遺影や遺品が展示されている。もともとは警視庁本部内に展示されていたが、見学者が深い感銘を受けていたため、平成11年に警察博物館に移転された。命を懸けて都民を守る警察官の姿を広く伝える場所ともなっている。

警察官だけではなく、警察にとって欠かせない〝相棒〟の死を悼む場所もある。事件捜査や行方不明者の捜索に当たる警視庁の警察犬や警備犬を供養する慰霊碑で、板橋区のペット霊園「東京家畜博愛院」にある。

東京家畜博愛院会長の関宏美さん(76)によると、この場所に慰霊碑が建立されたのは昭和43年。きっかけになったのは1頭の警察犬の死だった。犬の名は「アレックス号」。警察犬活動初期に数々の難事件解決に貢献した名犬だ。児童小説の題材にもなり、当時の子供たちから人気を集めた。

37年に死んだ際、心を痛めたのが関さんの弟、政美さん(73)だった。父親に頼み、木製の墓標を立ててもらった。警視総監だった秦野さんがその小さな墓標の存在を知って感動し、正式な碑の建立を決め、43年7月に碑が完成した。

関さんによると、同霊園を運営する父と警察犬訓練所の担当者は、警察犬の埋葬を通じて交友があったといい、「おそらく、訓練所の方から伝わったのでは」と話す。これまでに計286頭が合祀(ごうし)され、慰霊祭には鑑識課長や警備2課長などが参列し、生前の活躍をしのんでいる。

秦野さんは自著『逆境に克つ』の中でこう記している。

「数ある役所の中で警察ほどたくさんの殉職者を出す役所はほかにないだろう。それは警察が生命よりも重い責任を背負っているという事実を、はからずも教えてくれる」

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