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宇都宮と芳賀結ぶLRT 累計乗客数500万人超に 沿線活性化で高まる延伸への期待 深層リポート

産経ニュース 2024年10月19日 8時0分

宇都宮市のJR宇都宮駅東口を発着する次世代型路面電車「芳賀・宇都宮LRT」(ライトライン)の西口延伸への動きが本格化してきた。市が停留場の配置案を示し、11月の栃木知事選や宇都宮市長選では東武鉄道宇都宮線との接続の可能性が取り沙汰される見通しだ。LRTの累計乗客数は9月中旬に500万人を超え、沿線では人口増加や地価上昇といった経済波及効果も生んでおり、延伸に対して住民や商店街などで期待が広がる。

西側に12カ所の停留場

LRTの整備は宇都宮市が平成25(2013)年に策定した「東西基幹公共交通の実現に向けた基本方針」の中で、将来の街づくりに多くの効果が期待できる新たな交通手段として打ち出された。高齢化の進展を見据え工場や観光地など各拠点を公共交通で結び、マイカーに依存しなくても高齢者が移動しやすく快適に暮らすことができる「ネットワーク型コンパクトシティ」の実現が狙いだった。

駅東側は昨年8月末に開業。東口から鬼怒川を越え芳賀・高根沢工業団地の14・6キロを結び、全線新設のLRTは全国初とされる。2030年代前半の開業を目指す西口延伸について、市は今年に入って停留場の配置案を公表した。駅西口から県教育会館付近までの約5キロで12カ所の停留場を設定、その中に東武宇都宮駅前も含まれた。

ダブル選で東武接続議論に

LRTは東武鉄道宇都宮線と接続する可能性を想定して同じ線路幅となっている。11月17日投開票の栃木県知事選に立候補を表明した福田富一知事が東武宇都宮線との接続、乗り入れを「選択肢」とし、両路線の連携を公約に入れる意向を示す。知事選とダブル選挙となる市長選に出馬予定の佐藤栄一市長も連携の考えに賛意を示しており、両選挙を通じて議論が活発化するとみられる。

開業した東側ではこの1年余りで、LRT効果で沸いてきた。累計乗客数の節目である500万人は想定より約3カ月早い今年9月12日に実現。宇都宮市全体では人口が減る中、沿線人口は平成24年と比べ約5千人増となり、国土交通省が3月に発表した栃木県内の公示地価で住宅地の上昇率上位3位を沿線が占めた。同じく沿線の清原工業団地ではLRT開業前後に公表されている5社の投資額だけでも1100億円を超え、産業拠点として充実・強化が図られている。

来年度に申請方針

こうした活況にJR宇都宮駅西側の関係者たちは延伸に期待を寄せる。宇都宮二荒山神社周辺の商店街などで組織する「宇都宮中心商店街活性化委員会」理事長の斎藤公則さん(79)は「駅西側は歴史や文化、伝統を受け継ぐ宇都宮発祥の地。1日も早く開業してもらい、駅東側のようにLRT効果で中心街のにぎわいを取り戻したい」と期待する。

東武宇都宮百貨店と周辺の商店街が加盟する「宇都宮中心商店街みやヒルズ活性化委員会」会長の檜山昌彦さん(55)も「LRTが東武鉄道近くに整備されるだけでも人の流れが変わり、街なかに人を呼び込み活性化にもなる」と強調する。

市は今後、停留場の配置案をもとに大通りでLRTをどう走らせるかなど具体的な検討を進めていき、来年度に軌道事業を実施するために必要な国への申請を行う方針を示す。地方都市が生き残るための街づくりの基軸にLRTを据える宇都宮市。延伸が中心市街地をどう変えていくのか、注目される。

ライトライン

「芳賀・宇都宮LRT」の愛称で、雷が多い宇都宮の別名「雷都」から名付けられた。雷の光をイメージした黄色をシンボルカラーとして車体に配色している。3車体連接車で、定員は160人。自治体が軌道などを整備し、第三セクターが運営する「上下分離方式」を導入し、「宇都宮ライトレール」が運営している。

記者の独り言

ライトラインが開業したのは宇都宮市に赴任して約1年後。JR宇野宮駅東側の沿線に住んでいたので何度も利用しきた。静かで乗り心地はじつに快適。開業から1年がすぎ、乗客も増え、市民の足として定着しつつある。北関東最大の都市、宇都宮市は官庁街や商業地のある駅西側が中心だったが、全国の地方都市と同様に郊外化が進み、かつてのにぎわいは見られない。駅西側への延伸で中心市街地がどう変貌していくのか、見つめていきたい。(伊沢利幸)

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