猛暑の夏、台所で火を使う時間をなるべく短く済ませたい。見た目より食べ応えが大事で、少ない食材でも作れる。最近、注目の〝地味メシ〟が夏の食卓の助けになりそうだ。
「コロナ禍の不安定な社会の経験と、最近の物価高。その影響で、堅実で地に足がついた『地味』志向がトレンドとして高まっている。料理においても、飾らず見栄えをそこまで気にせず、本来の味や素材を重視する方向に戻っている」
そう話すのは、味の素のPR担当、山崎誠也さんだ。
同社が昨年11月に行った意識調査では、回答した人の7割が、交流サイト(SNS)の「映え」や「盛り」に「飽きや疲れを感じる」と答えた。一方で、食品や日用品の購入時に重視すること(複数回答)については、約半数が「長く使えるもの」「くらしに欠かせないもの」と回答。この結果について、同社は地に足のついた「地味」なものへの恒常的なニーズがあるとの分析を示した。
反応がいいのは簡単に作れるもの
インスタグラムのフォロワーが100万人超の人気料理研究家、もあいかすみさん(32)も「手が込んでキラキラ感のあるレシピを紹介しても、反応がよくない。地味なメニューのほうが身近に感じてもらえる」と同調する。
SNSで反響が大きい〝地味メシ〟は、どんなメニュー?
「見た目や彩りが控えめなだけでなく、使う食材や調味料は定番のものだけで、少ない材料で簡単に作れるものです。派手な料理は時間や手間がかかることが多い。作りやすいというのも『地味』の定義です」 手間が少なくすむ〝地味メシ〟は、暑くて火を使いたくない夏の調理にもうってつけだという。おすすめの料理3品を教わった。
シューマイは包まず、カレーは煮込まず
いずれも食材は3~4種類と少なめで、調味料はどの家庭にもある定番のものばかり。シューマイは皮で包まず、キーマカレーは煮込まない。調理をできる限り単純化し、洗い物を減らすため調理道具も最低限にした。
加熱にはコンロではなく電子レンジの使用を徹底した。もあいさんは「レンジ加熱は、暑い台所で火を使わずに済むだけでなく、コンロより時短になり、火加減による失敗が減ります」と話している。(田中万紀)