茨城県のつくば市役所(同市研究学園)に、障害者施設でつくられたパンや野菜、アクセサリーなどを販売する店「融点」がオープンした。店名には固体が液体になる温度になぞらえ、障害者の社会参加が進んだり、訪れた人が障害への理解を深めることで、考え方が変化したりしてほしいといった願いが込められている。
こうした福祉の店はこれまで、市内の期間限定のイベントなどで販売コーナーを設ける形で開かれていた。多くの人が訪れる市役所内に常設店を設置すれば、障害者の工賃向上や障害者自身が販売に関わることで社会参加にもつながる利点があるという。
販売する商品は市内15の障害者施設で作られたパン、野菜、コメ、タマゴなどの食品やアクセサリー、バッグなど。筑波山麓から流れる沢水を使い、農薬を最小限に抑えて生産した「つくほう米」や、目の細かい麻100%の生地で精妙に仕上げた「マイクロミニバッグ」など約100点の商品がずらりと並ぶ。
店舗は市役所1階の東玄関横にあり、障害がある人も2~3人で接客することになっている。営業時間は、月曜日から金曜日の午前10時~午後2時。
店舗のデザインや設計は、障害者らのアート作品を商品化して作家に収益を還元する「ヘラルボニー」(盛岡市)が担った。
オープニングセレモニーで、ヘラルボニーの松田崇弥社長は「これまで障害や福祉と接点がなかった人が障害のある人と出合うきっかけとなり交流が生まれることで、多くの人に福祉を身近に感じてほしいという思いを込めた」と話す。
五十嵐立青市長は「働くとは自己表現の一つ。それぞれの人が仕事をして、感謝をされたり自分でやりがいを見つけたりと、さまざまなプロセスを通じて自分がそこにいるんだということを表現する。それが結実したものがこの店に並べられる商品だ」と強調した。
障害者施設の一つ「ごきげんファーム」で養鶏を担当する斎藤蓮さん(23)は「自分がとった卵をお客さんが買ってくれてうれしい。みんなと触れ合えるので店番も楽しみ」と話していた。(篠崎理)