朝鮮休戦協定もいよいよきよう正式調印の運びとなつた。北鮮軍が卅八度線を越えて侵入して来てから三年、休戦交渉が始つてから二年になる
▼この間戦闘は共産軍が釜山近くまで来たかと思うと、こんどは国連軍が鴨緑江の岸まで達するという波乱の攻防戦だつた。朝鮮全土に亘つて、戦闘の津浪が起つた
▼このため自分は南鮮に、家族は北鮮に、といつた悲劇も起つているらしい。速かに平和が来て、家族再会の日をえさせたいものだ
▼最近は戦線が膠着状態であつた。その代り、波乱は休戦交渉の方に移つていた。いまにも休戦が成るかのような観測が生れるかと思うと、また、休戦はいつのことになるか判らぬような悲観材料がとび込んで来る。世界はその推移に一喜一憂した
▼こんどこそ間違いなしというニュースも、実際にハンコを押すまでは安心できないような不信感を抱かせた。相手がカーテンの中から首だけ出して物をいつている共産側だ。また、韓国側も、捕虜釈放という大放れ業をする。国連側も楽でない
▼休戦が出来ると、次ぎは政治会議がひかえている。ここで朝鮮の統一と平和を確立するという大事業にとりかかる訳だ。共産側としては侵略で失敗したところを政治交渉で取りかえそうとするに相違ない
▼そこで考えねばならぬことは、共産側は何故、この動乱を起したか、ということである。それがモスクワ―北京―東京の赤色ルート開拓の準備行動だつたとすれば、政治会議で国連側は余程しつかりやつて貰わねばならぬ。
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※当時、産経抄は天鼓と呼ばれていました