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「安易すぎる」 千葉県提示の宿泊税上乗せ方式に南房総、浦安両市が「二重課税」を懸念

産経ニュース 2024年8月11日 8時0分

ホテルなどの宿泊客に課税する「宿泊税」が各地で進むなか、千葉県内でも導入議論が本格化している。ただ、宿泊料金に関係なく、1人1泊150円を課すという県の素案に対し、別に導入を検討する浦安市や南房総市は「二重課税」による客離れを懸念する。県は導入時期や徴収方法について両市と調整を急ぐが、曲折も予想される。

「県の宿泊税は外して」

千葉県が7月、有識者による検討会議に提示した素案によると、課税対象施設は県内のホテル、旅館、簡易宿泊所、民泊で、宿泊客に一律150円を課すことになった。

県内の市町村がこれとは別に独自に宿泊税を設定する場合には、県の素案にある150円に市町村分も上乗せする「千葉モデル」(検討会議座長の内山達也城西国際大教授)が素案で示された。

これに南房総市の石井裕市長がかみついた。

7月26日の記者会見で、県の素案について個人的な感想と前置きしつつも、「上乗せは安易すぎる。県の宿泊税は外してもらい、(市町村に)自主的にやらせてもらうのがありがたい」と牽制(けんせい)してみせた。

県の150円に、市独自の宿泊税を上乗せして課税する「二重課税」になれば、宿泊客の負担感が増す。そうなると、近隣市町村との競争力も低下しかねないという懸念が拭えないという理由からだ。

逆に、市町村側が導入を見送り、県の宿泊税頼みになると、徴収した宿泊税の一部は市町村側に分配される。

この場合、南房総市の〝取り分〟がどうなるかや、地元の宿泊業者のニーズにマッチした使い道になるのか、先が見通せない。それだけに、南房総市としても、安定した独自の財源が欠かせないというわけだ。

膨らむ行政需要

同様に宿泊税の導入を検討している浦安市の担当者も「上乗せは宿泊客や宿泊事業者の理解を得られるか、厳しい」と打ち明ける。

浦安市内には各地から来訪者が絶えない東京ディズニーリゾート(TDR)が位置し、高級ホテルなどの宿泊施設も少なくない。

同市では、観光政策の推進と合わせ、来訪者の救急搬送の要請やごみ問題、交通渋滞といった行政需要が膨らんでいる。「これらをカバーするには、宿泊客に一定の負担が必要だ」として宿泊税の導入を議論している。

思惑絡み調整は不透明

宿泊先の市町村により、課税額が異なる事態が想定されるのが千葉県の上乗せ方式だ。これと対照的なのが「福岡モデル」だ。福岡県は令和2年、県内の宿泊者に一律200円を課す宿泊税を導入したが、これには例外がある。

福岡県とは別に、独自に宿泊税を導入した政令指定都市の福岡市と北九州市では、200円(宿泊料金は2万円未満)のうち150円が市側に入り、50円が県の税収となる。

導入をしていない市町村では200円が県税収入となり、宿泊客の負担は県内では一律となるようにした。

ただ、この福岡モデルに落ち着くまで、宿泊税を巡る福岡県と県都・福岡市の主張は平行線をたどり、調整は難航した。最後は令和元年の小川洋知事(当時)と高島宗一郎市長のトップ会談でなんとか決着した。

一連の経緯を教訓に、千葉県は上乗せ方式を示した理由を、「(市側との)無用なケンカを避けるためだ」(担当者)と説明している。

浦安、南房総両市に先行して県が制度設計案を示すことで、「議論の主導権を握ろう」という思惑も透けてみえる。

一方で両市は8月に開く有識者らによる検討組織で、上乗せ方式を含む県の素案の内容を議論の俎上に載せる予定だ。だが、これにはそれぞれの構成委員から異論が噴出する可能性がある。

宿泊客から徴収する宿泊施設側の意向も絡むだけに、今後本格化する県と2市との調整の行方が注目される。(岡田浩明)

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