国家公務員総合職試験,一般職試験に合格すると,その主な職場は「国の行政機関」である1府12省庁,つまり,内閣府および11省+国家公安委員会(警察庁)となる。さらに各省の下には外局である庁や委員会が置かれており,地方に出先機関を設けている省庁も多い。国家公務員の職場は実に幅が広いといえるだろう。それぞれの官庁が取り組んでいる仕事内容や課題などを紹介する。
財務省の使命
財務省の使命は,納税者としての国民の視点に立ち,効率的かつ透明性の高い行政を通じて国の財務を総合的に管理・運営することにより広く国の信用を守り,健全で活力ある経済および安心で豊かな社会を実現するとともに,世界経済の安定的発展に貢献して,希望ある社会を次世代に引き継ぐことである。
このような使命を果たすべく,財務省は,予算編成,税制改正,関税制度,国債管理政策,政府開発援助政策,為替政策などの具体的な政策ツールを用いて,内外の諸課題に日々取り組んでいる。
予算編成,税制改正から国際金融まで
〈大臣官房〉 大臣・副大臣・政務官を補佐するとともに,財務省の所掌事務の総合調整,人事・会計等の管理事務,所管行政に必要な各種の調査・分析,政策金融の企画・立案や,政府系金融機関の監督,金融システム安定のための制度整備や金融危機への対応,預金保険機構等の監督等を行う。
〈主計局〉 主計局の主要な業務である予算編成作業は,各省庁から概算要求が提出されることで幕を開ける。この概算要求に対し,数か月にわたって各省庁の担当者に対するヒアリングが重ねられ,適正な予算額が査定される。閣議決定された政府案は国会に提出され,国会での審議・可決により成立する。
予算編成の過程では,個別の政策について,効率的かつ効果的な実施に向けた検討のほか,関連する制度全般についての見直しも提案するという「提案型査定」を行っている。また,健全な財政の確保と活力ある経済の実現を図るため,各政策への予算配分が全体として最適になるよう不断の議論が行われる。
〈主税局〉 主計局が国家財政の歳出面を担当しているのに対し,主税局は歳入面の核である税制の企画・立案に当たっている。税制度は経済社会の実態に合わせて絶えず見直しを行っていくことが必要である。
主税局は,こうした税制改正など国税に関する制度についての調査や企画・立案をはじめ,租税の収入見積りに関する事務,地方税の制度に関する事務,外国との租税に関する協定(租税条約等)の企画・立案についての事務などを行っている。
〈関税局〉 関税局の業務には2つの柱がある。1つは,外国からの輸入品に課される関税率の設定や,WHO(世界貿易機関)協定やEPA・TPP に関する交渉など関税制度の企画・立案に関する事務,APEC(アジア太平洋経済協力)やWCO(世界税関機構)等の国際機関との連携などである。
もう1つは,税関の指揮・監督である。税関は,関税の賦課徴収・輸出入貨物の水際取締りなどを行っている。
〈理財局〉 国の財政活動に欠かすことのできない国の財産(資産・負債)の管理について,主に国庫金の管理,国債管理に関する事務,財政投融資に関する事務,国有財産に関する事務の4つの業務を行っている。
〈国際局〉 外国為替や国際金融システムについての調査や企画・立案を行う。また,多国間・二国間協力の促進,国際的な資金の流れの調査・分析,外国為替資金の管理,国際収支統計の作成,ODA(政府開発援助)政策の企画・立案,IMF(国際通貨基金)やIBRD(国際復興開発銀行)についての事務なども担当している。
外局
●国税庁 内国税の賦課徴収を行う機関として昭和24年6月1日に大蔵省の外局として国税庁が発足し,税務行政の運営に当たっている。現在全国に,12か所の国税局(所),524か所の税務署が置かれ,5万6,000人の職員が適正・公平な課税の実現に取り組んでいる。
本省の出先機関としては,全国9か所の財務局と1か所の財務支局,8か所の税関と1か所の地区税関がある。
●財務局・財務支局 国の予算の執行に関する監査・調査,地方経済の調査,法人企業統計調査,たばこ事業等に関する監督,財政融資資金の管理・運用,国有財産の管理・処分のほか金融庁長官から委任された地方民間金融機関等の検査・監督,証券取引等に係る監視,有価証券届出書等の審査,公認会計士試験の実施等に当たる。
●税関・地区税関 関税・とん税・特別とん税等の賦課・徴収,輸出入貨物・船舶・航空機・旅客の取締り,通関業の許可,通関業者の監督,通関士試験の実施等に当たる。
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財務局,税関,国税庁とも,本省との人事交流が活発で,本省との間で異動を重ねながら昇任していくケースが少なくない。
これからの行政課題
少子高齢化が進む中,わが国の財政状況は,国・地方を合わせた長期債務残高が現在1,000兆円を超えるなど,先進国中最悪の水準となっている。目を外に転じれば,新興国の台頭やEPA・FTA の加速など,ヒト・モノ・カネ・情報のグローバル化が顕著である。
前述したように,財務省は多岐かつ重大な任務を担っており,日本のみならず世界の経済・社会に多大な影響を与えている。このため,グローバル化への対応や財政再建などの諸問題について,従来のものの見方にとらわれず,先手を打って政策を立案・実行できる人材が求められている。わが国が,経済・技術・文化・自然などあらゆる面で世界において輝き続けるよう,将来を展望した国づくりにかかわりたい方はぜひ,財務省の門戸をたたいてほしい。
人事データ
配属・移動
総合職の職員は採用後,本省各局の総務課などに配属され,2年間業務経験を積む。その後約1年間,全国各地の国税局・財務局・税関に出向し,国税調査官や金融証券検査官,監視官を経験する。そして,若手のうちに,ほとんどの職員が海外の大学院への留学や海外勤務を経験する。
昇任
総合職職員は4年目前後から係長となる。係長を2年ほど経験した後,課長補佐として行政の第一線に立ち,政策の企画・立案に主体的に携わる。本省各局や地方支分部局で幅広い経験をするのはもちろん,他省庁や地方自治体,在外公館やIMF(国際通貨基金)などの国際機関に派遣されることもある。
採用動向・採用予定
総合職入省者は,令和3年度は25 人,令和4年度は25 人,令和5年度は25 人を採用。
一般職(大卒程度)入省者は,令和3年度は9人,令和4年度は12 人,令和5年度は11 人を採用。
また,窓口は別になるが,財務局,税関,国税庁でも,別途職員を採用している。
(公務員試験受験ジャーナル 公務員の仕事入門ブック・6年度試験対応・記事内容を一部編集しています)