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滋賀県パートナーシップ制度、1組目が宣誓 すべての人権が尊重される社会に

産経ニュース 2024年9月4日 16時0分

滋賀県が9月から導入したLGBTなど性的少数者を含むカップルを証明し、宣誓書受領証を交付する「パートナーシップ宣誓制度」の1組目のカップルが2日、滋賀県庁で宣誓した。2人は、「(パートナーとしての関係を)認めてもらったのが一番うれしい。それだけで希望が持てる」と喜んでいた。滋賀県人権施策推進課は、「制度のスタートで、LGBTなどに対する県民の理解がより一層進むことを期待する」としている。

■近くにいられる

宣誓したのは大津市在住の女性(51)と、性自認が男性である女性(54)の2人。26年前から同居し、現在は2人で会社を経営している。

8月中に事前受付をした2人はこの日、宣誓書と、宣誓要件である成人に達している▽配偶者がなく、宣誓相手以外とパートナーシップにない▽パートナーと近親者でない―を証明する書類を提出。確認後、人権施策推進課の田中良平課長から宣誓書受領証の交付を受けた。

交付後、取材に応じた2人は、「制度を待っていた」「第一号として証明されたことを本当にうれしく思う」などと喜んでいた。

これまで、職場で同意なく第三者に性的指向、性自認を明かされる「アウティング」被害に遭ったり、パートナーの代わりに病院へ薬をもらいに行き、「本人か家族でないと」と断られるなどつらい経験をした。2人は、「私たちはオールドパートナーで、何が起きるかわからない。これからは、事故などの命にかかわる場面で、一番そばにいてほしい人に近くにいてもらえる」と期待していた。

■県内6市が導入

パートナーシップ宣誓制度は、一方または双方がLGBTなどの当事者であるカップルが対象で、人生において互いが協力して継続的に生活を共にすることを約束した関係を宣誓。それを県が証明し、宣誓書受領証を交付する。

宣誓書受領証を提示すれば、県営住宅への入居などのサービスが利用できるようになる。法律上の婚姻とは異なり、法的な効力(相続、税控除など)は生じない。

同様の制度は、滋賀県内では令和3年10月に彦根市が施行。その後、米原、近江八幡、長浜、草津、甲賀の各市が導入している。

認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」によると、全国で同様のパートナーシップ制度を導入している地方自治体は459(6月28日現在)で、人口カバー率は85・1%にのぼる。

■カップル続々と

「滋賀県のパートナーシップ宣誓制度がなくても、LGBTなどの当事者が実際に困る行政サービスはそれほど多くない」と人権施策推進課の山崎久美子参事はいう。

同制度に対応して提供される県の行政サービス一覧に記載されているのは、<県営住宅への入居><モーターボート競走にかかる入場の拒否および投票の停止の申請>―だけ。「救急搬送証明の申請」「り災証明書の申請(火災)」「携帯電話の家族割引」など市町や民間事業者にかかわるサービスの方が圧倒的に多い。

それでも、県の同制度開始の意味は大きい。

「1組目のカップルのコメントにあるように、LGBTなどの当事者にとっては不安が解消され、心強い。県民の理解を勧める上でも大きい。制度の周知で、すべての人権が尊重される社会を目指したい」と山崎参事は話していた。

同課によると、4日に1組のカップルが宣誓。さらに、2組のカップルが宣誓書提出の日程調整に入っており、近く宣誓する。

(野瀬吉信)

■LGBT

L(レズビアン=女性の同性愛者)、G(ゲイ=男性の同性愛者)、B(バイセクシュアル=両性愛者。同性も異性も好きになる人)、T(トランスジェンダー=身体の性と心の性が一致していない人)。LGBT以外にも、Q(クエスチョニング=自分の性を決められない、わからない人)、A(アセクシュアル=男性、女性どちらに対しても恋愛感情を抱かない人)、X(エックスジェンダー=心の性を男性、女性のいずれかとは明確に認識していない人)などの性的少数者がいる。性的指向や性自認の多様性に寛容な社会の実現を目指した「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」が令和5年6月に施行されている。

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