2024年問題で不足が深刻な路線バスの運転手を確保しようと、陸上自衛隊の岩手駐屯地(岩手県滝沢市)で8日、定年退職を控えた50代、2年単位の任期満了で退職を控えた20~30代半ばの隊員向けに実際の路線バスの運転を体験する試乗会が開かれ、31人がハンドルを握った。
滝沢市では昨年、運転手不足で路線バスの便数がピークの平成20年代後半からほぼ半減。公共交通の維持に危機感を強めた武田哲市長が東北防衛局に協力を要請して試乗会が実現した。
陸自隊員のほとんどは部隊運用の必要から大型運転免許を取得している。大型運転免許から取得しなければならない初心者に比べ、2種免許を取得するだけで短期間に路線バスの運転手を養成できる。
武田市長の要請は、隊員の再就職を支援している陸自にも渡りに船。県内で路線バスを運行する岩手県交通も協賛、バス2台を持ち込んで実現した。
試乗会には武田市長、岩手県交通の本田一彦会長も参加。31人の隊員が岩手県交通の指導員の説明を受けながら、岩手駐屯地内の自動車教習コースでそれぞれ10分間にわたり運転した。
長さ10・5メートルの路線バスは前輪が運転席の後ろに位置する。運転席の真下に前輪がある軍用トラックとは勝手が違うが、指導員役の岩手県交通の赤間浩志松園営業所長は「皆さん飲み込みが早い。1周で違いを理解していた」と絶賛。
ハンドルを握った沢田幸治准陸尉(55)は「バスとトラックの感覚の違いをつかめ参考になった。バス運転手は子供のころから興味があった。ぜひやってみたいと思っている」と前向きだった。
武田市長は「地域の足を確保するためのきっかけになれば」、本田会長は「第2の職場として視野に入れてほしい」と協力を呼びかけた。同駐屯地の退職者からどれだけの路線バスの運転手が誕生するか注目される。