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不審船の監視想定、「ソノブイ」投下で潜水艦の特徴把握も 海自最新鋭哨戒機P1搭乗ルポ

産経ニュース 2025年1月14日 14時24分

海上自衛隊下総教育航空群(千葉県柏市)が8日、実施した初訓練飛行で下総航空基地を飛び立った最新鋭哨戒機「P1」に、記者も搭乗した。勝浦沖の「不審船」を監視するという想定での約1時間半のフライト。国民の安心・安全を確保するため、日本周辺海域の警戒監視を担うスペシャリスト集団の活動の一端を見た。

多数の電子機器

機体に乗り込むと、通路の両側に精密な電子機器類が所せましと並んでいた。旅客機のような座席はほとんど見当たらない。

暗がりの中にある無数のモニターが、機体の前方で目に入った。4人のミッションクルーが並んで座り、画面を見つめる。検知したわずかな電波や、投下したソノブイ(音響探知機)から送られる信号などが映し出され、解析する。

「彼らがいなければ、警戒・監視は成り立ちません」(ベテラン搭乗員)

コックピット後方の左右にあるモニターの前に、戦術航空士が座る。ミッションクルーからの情報を集約、分析し、任務遂行のための戦略を練る。

日ごろは、同基地でパイロットや戦術航空士を目指す航空学生に、必要な知識や技能を磨くための教育を行っている隊員たちだ。

P3Cしのぐ速度、高度

この日は、四街道市や茂原市の上空を飛び、勝浦で洋上に出る飛行ルート。高度約600メートルを時速400~450キロで飛んだ。

快晴だったが、強風で機体は絶え間なく、大きく揺れた。手すりにつかまらないと立っていられず、記者は離陸後、20分ほどで吐き気を催すほどだった。

P1は全長38メートル、全幅35・4メートル。主力の哨戒機「P3C」よりも飛行高度や速度は1・3倍、航続距離も1・2倍の高性能を誇る。

ソノブイを連続で海中に投下する装置も備わる。ベテラン搭乗員は「間隔を短く落とせば詳細な海中の音が入り、それだけ探知能力も上がる」と語る。こうして得たデータから、上空から目視ができない潜水艦の特徴まで割り出す。

房総半島を抜けると、ベテラン搭乗員は窓から見える海面を見つめて言った。

「風速は25~30メートル。北西の風が吹いていますね」

何を見ればそんなことが分かるのか問うと、「海面に立つ白波の様子を見て判断するんです」と教えてくれた。記者も目をこらすが、さっぱり分からない。

雲の高さなどから高度も推定するという。「現場では、ちょっとした変化を感じる力が重要です。風速や風向は基礎中の基礎。訓練では、こうした搭乗員として必要な素養も養います」

五感を研ぎ澄ます

基地を飛び立ち、約30分後。勝浦沖を東に約60キロ地点、不審船に見立てた貨物船が見えてきた。高度を150メートルまで落とす。旋回を繰り返す機内から、搭乗員が双眼鏡や目視で特異な積載物がないかを確認し、カメラで船体を撮影した。

今回は貨物船との通信はなかったが、近づく哨戒機側に、「何をしにきたんだ」と外国船から通信が来る場合もあるという。そんな時には「こちらは国際法に基づき、正規の行動をしている」と毅然(きぜん)と応対しているという。

不測の事態も想定し、五感を研ぎ澄まして対処する搭乗員の緊張感を肌で感じた。(松崎翼)

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