11月19日の国際男性デーを前に、NPO法人「日本弱者男性センター」は、今年も路面電車を借り切って、「男性専用車両」として走らせる。過去4回は東京さくらトラム(都電荒川線)で運行されたが、17日に開催予定の5回目は、初めて東京都を飛び出し、大阪市内を走る路面電車を利用する。男性も異性からの性被害や痴漢の冤罪被害などの不安や恐怖を抱えていることを、関西の人たちにも訴える狙いだ。
当初は運行を断られる
同センターは父の日のある6月と国際男性デーのある11月の年2回、都内で唯一、路面電車が走る都電荒川線で「男性専用車両」を走らせるイベントを開催している。今年の11月も同路線での運行を予定していたが、車両を借りられる日程の調整がつかなかったため、路面電車が運行している別都市での開催に向けて調整を進めた。9月に大阪市内の運行会社に打診したところ、運行の承諾を取り付けることができた。
しかし、10月中旬に突如、会社側から「車両を貸し出せなくなった」との連絡が届いた。「男性専用車両を推奨している会社だと思われたくない」というのが理由だった。
「またか…」。同センターの藤倉たける代表は、初めて都内で男性専用車両を走らせるまでの苦労を思い出した。
寄せられたクレームや苦情
実は、初回の運行時も承諾を得たはずの運行計画が撤回されている。運行イベント開催の1週間前に、東京さくらトラムを運営する東京都交通局から「白紙に戻してほしい」と連絡を受けた。同センターが男性専用車両の運行イベントをSNSなどで告知したところ、同局宛に男性専用車両の運行に反対するクレームや苦情が複数件届いたことがきっかけだったという。
「運行取りやめとなると、東京都も弱者男性を差別している印象を与えるのではないか」。同センターが根気強く訴えた結果、何とか運行までこぎつけることができた。ただし、トラブルを回避するため、運行時は複数の警備員を伴う厳戒態勢で行われた。
大阪では制限付きで運行
こうした苦境を経て、現在は両者の理解も醸成され、大きなトラブルなく男性専用車両の運行イベントは継続されている。それだけに、今回、大阪市の運行会社に電車の貸し切りを断られた際は、「他の地域ではまだまだ弱者男性への理解が浸透していないのだと実感し、がくぜんとした」(藤倉氏)という。
それでも、これまでの運行実績や社会的意義などを強く訴えることで、何とか運行のメドをつけられた。とはいえ、運行に際しては「イベント告知での運行会社名の通知禁止」「車内での『男性専用車両』のパネル設置禁止」「報道機関の車内撮影禁止」といった多くの制限がかけられた。
「男性専用車両もあってこそ、本当の男女平等が実現できる」。藤倉氏は関西でもこの思いを強く訴えていくつもりだ。
イベント参加希望者は17日午後12時45分までに、JR天王寺駅南近鉄前交差点にある阿倍野歩道橋南側(大阪市天王寺区)に集合。参加費無料。乗車人数は約30人。午後1時に天王寺駅前を発車し、浜寺駅前を折り返す車両を借り切って、開催する。運行時間は約2時間半を予定。