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「夏合宿」に「2500円銭湯掃除体験」 客を呼びブランド磨く 大阪・石橋商店街の挑戦 商店街を創る

産経ニュース 2025年1月18日 12時0分

阪急宝塚線の石橋阪大前駅は大阪大学豊中キャンパスの最寄り駅だ。駅改札口に直結する「石橋商店街」は通学路で、周辺に下宿する学生も多い。

「商店街と一緒に面白いことができるかも」。約20年前、学生たちが商店街の空き店舗を借り、「石橋×阪大」としてサークル活動を始め、商店街のイベントを手伝うようになった。

そのサークルOBの浅田圭祐さん(27)がいま、商店主らで作る「石橋商店会」の事務局を務めている。広報から企画、補助金申請まで何役もこなす。いわば「一人広告代理店」だ。

大学卒業後、大阪商工会議所に就職した。コロナ禍の最中、商店街の活性化を支援する国の補助事業「Go to 商店街」の申請を手伝ったのがきっかけで、商店街との関係が復活。社会課題を解決したくてベンチャーキャピタルに転職し、その仕事の傍ら、事務局を担うことになった。「石橋商店街は新しいことにチャレンジさせてくれる、実証実験できるところがいい」という。

浅田さんが大学4回生のときに企画し、今も続くイベントに「夏合宿in石橋商店街」がある。小学4~6年生が商店街で1泊2日の合宿を行う。児童が朝、パン屋さんでパンを焼いて食べ、阪大生と一緒に夏休みの宿題をやり、銭湯の掃除を体験する。「林間学舎の商店街バージョン」。毎年、定員を大きく上回る参加希望者がある人気イベントだ。

自己最高の自信作は「商品券ガチャ」。100円で買うカプセルの中に100円以上の商品券が入っている。商店街全店共通ではなく、使える店が指定されている。普段行ったことのない店で買いものをしてもらうのが狙いだ。客側は、100円の元を取りたいという心理がついつい働き、無料配布のクーポンに比べ使用率は格段に高いという。

「目的は送客。店舗の売り上げを増やすことにある。いくら人を集めても、お店がもうからなければ意味がない。事業も継続できない」

そのため、「参加無料」のイベントはやらない。昨年行われた銭湯の掃除体験は2500円に設定した。結果は、2人参加で5千円の売り上げ。それでも銭湯側にすれば、5千円払って掃除してくれるのだからありがたい。

「営利活動と社会貢献は分けて考えたい」と浅田さん。「これまで〝なあなあ〟だった。地域還元は赤字覚悟でもやるけれど、個々の店に売り上げがひもづいているものは、しっかりお金をとりたい」

商店街によってはコンサルタント会社や広告代理店に業務委託するケースがあるが、これには否定的だ。

「外注するとナレッジ(知見)が蓄積されない。やってみて、失敗して、反省してこそ自分たちの力が磨かれていくから」

足元の地域に眠る人材にも注目する。地域の活動に興味のある人、地域を盛り上げたい人は、時間に余裕のあるシニアに限らず存在する。「『スキマ時間』に手伝ってもらえればいい」。仕組みを整えることが課題だ。

近く通信販売も始める。売り出すのは石橋商店街の商品詰め合わせ。まずは阪大OBをターゲットとする。商店街が、ブランドになる。

事業には持続性が求められる。続けるには「付加価値ををつけて、しっかり稼ぐこと」。挑戦に迷いはない。(安東義隆)

石橋商店街 大阪府池田市の阪急宝塚線石橋阪大前駅すぐ。商店街はT字形に3方向に広がる「赤い橋通り」「阪大下通り」「サンロード」に、約300店舗が軒を並べる。毎月18日に「おはこ市」が開催され、各店が得意とする商品、まさに十八番(おはこ)を大安売りする。大阪大学豊中キャンパスの通学路でもあり、阪大生とコラボレーションしたイベントや情報発信も行われている。

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