令和5年1月19日夕、東京都狛江市の住宅で、当時90歳の女性が両手首を結束バンドで縛られ、亡くなっているのが見つかった。警視庁捜査1課は強盗殺人事件として捜査を開始したが、前年から関東地方で相次いでいた強盗致傷事件との関連が浮上する。
強盗の実行役らは交流サイト(SNS)の「闇バイト」などで集められていた。やりとりには一定期間がたつと履歴が消去される秘匿性の高い通信アプリが使われ、直接会ったことのない「ルフィ」などと名乗る者らから指示を受けていた。
警視庁は、ルフィらがフィリピンの入管施設に収容されていた特殊詐欺グループ幹部の男4人と特定。5年2月、強制送還された4人の身柄引き渡しを受けた。押収した携帯電話の解析などを進め、4人は全8事件で起訴された。
特殊詐欺グループが強盗へと手口を凶悪化させた一連の事件は、体感治安を悪化させた。暴力団など既存の組織犯罪集団と異なり、実行役は離合集散を繰り返し、実態は不透明。匿名性の高い通信アプリに隠れ、指示役は仲間内でも顔が見えない。警察庁は新たな治安の脅威として「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」と定義。摘発を強化している。
今年8月以降も関東を中心に闇バイトに応募した実行役が指示を受けた強盗事件が相次いで発生。警視庁と千葉、神奈川、埼玉3県警の合同捜査本部は指示役ら首謀者の特定を急いでいる。(前島沙紀)