警視庁本部(千代田区)にある「警視庁健康管理本部」では、医師や保健師、栄養士などが、職員の健康診断や保健指導、メンタルケアなどに当たっている。首都の治安を守る警察官にとって心身ともに健康であることは大切で、4万6千人の職員をサポートすると同時に、危険を伴う業務などにはチームに随行し、警察組織の一員としての役割を果たしている。(大渡美咲、写真も)
健康管理本部は昭和27年、厚生課の付置機関として「健康管理室」が設置され、43年2月に現在の健康管理本部となった。医師や保健師、栄養士、臨床検査技師、心理職などの専門職員を含む53人で職員の健康を守っている。
普段は警視庁本部で職員の健康相談を受けてアドバイスをしたり、保健指導をしたりしているが、事件や事故、大規模警備の際には、現場に赴くこともある。
令和3年に開かれた東京五輪・パラリンピックでは、全国から集められた特別派遣部隊の健康管理のため、待機施設に赴き、巡回保健指導を実施。当時は、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されている時期でもあり、体調不良者が出た場合の隔離や抗原検査なども行った。
過去には、昭和47年2月、長野県軽井沢町で起きたあさま山荘事件でも、当時の健康管理本部長で医学博士の梅沢勉参事官らが現場に派遣されたという(佐々淳行著『連合赤軍「あさま山荘」事件』)。平成7年の一連のオウム真理教事件の際には、救護班を編成。医師や保健師が教団最大の拠点があった山梨県旧上九一色(かみくいっしき)村に派遣され、捜索などにあたる捜査員の有事に備えた。
平成23年の東日本大震災では、医師、保健師、心理職員の3人が福島県に派遣され、警視庁の派遣部隊の診療などを行った。職員だけではなく被災者のケアを行ったケースもある。28年の熊本地震では、生活安全部の女性警察官を中心に構成する「警視庁きずな隊」の一員として、心理職員2人が熊本県に派遣され、被災者の心のケア対策にも従事した。
警視庁本部で、現場で、職員の心身の健康のために尽力する健康管理本部。松下慎一健康管理本部長は「警察職員が現場で憂いなく活躍できるよう、健康状態の把握と職員1人1人の気持ちに寄り添いながら健康サポートに取り組んでいきたい」としている。