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長屋王に有間皇子…非業の死を遂げた古代の人物を人形で伝える 奈良で企画展

産経ニュース 2024年7月21日 8時30分

万葉歌をもとに元中学校美術教諭の永瀬卓(たく)さん(75)=埼玉県越谷市=が制作した人形を通じ、歴史上の人物をしのぶ夏期企画展「万葉挽歌(レクイエム)-人形から見る古の奈良-」(平城宮跡管理センター、奈良文化財研究所主催)が、奈良市の平城宮いざない館で開かれている。悲劇の皇子として知られる有間皇子(ありまのみこ)らの人形約30点を展示している。9月1日まで。

永瀬さんは定年退職後、手探りで人形制作を開始。万葉集に登場する人物を、石の粉が原料の石塑(せきそ)粘土を使って造形化し、平成30年に東京で個展を初めて開いた。その後、日本画家で尼僧の中田文花さんが交流サイト(SNS)で人形を紹介したことで注目を集め、今回、人形になった人々のゆかりの奈良で展示会を開くことになった。

会場に座像、立像が並ぶ有間皇子は孝徳天皇の皇子で、謀反を企てたとして捕らえられ、若くして紀伊国(和歌山県)で絞首刑に処された人物だ。永瀬さんは若い頃に「どんなにかつらく、孤独だったことだろう」と思って以来あたため続け、60代半ばで造形。会場では有間皇子が護送される途中で詠んだ「岩代の 浜松が 枝を引き結び ま幸(さき)くあらば またかへりみむ」などの2首も示されており、繊細な人形とともに思いを寄せることができる。

永瀬さんはこうした非業の死を遂げた人物らを次々と形にしてきた。天武天皇の皇子で、謀反の疑いがかけられ死を賜った大津皇子や、二上山を亡くなった弟として見た大伯皇女(おおくのひめみこ)らの人形も展示。さらに、左大臣となりながら藤原氏の陰謀で自害に追い込まれたという長屋王の人形もあり、歴史上の人物を身近に感じる機会となっている。

永瀬さんは「人形はそれぞれ古代に現実に生きていた人々で、しのんでいただければ」と話している。

開館は午前9時~午後5時で、期間中無休。観覧無料。会場では復元楽器を使った音楽も楽しむことができる。

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