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総選挙で政権交代は? 〝裏金〟を政治家は「たいした問題じゃない」と思っている 話の肖像画 ジャーナリスト・田原総一朗<7>

産経ニュース 2024年10月7日 10時0分

《石破茂首相は〝最短コース〟での解散・総選挙(15日公示、27日投開票)を選択した。一方の野党は「政治とカネ」の〝問題隠し〟と反発。これを最大の争点にして与党の過半数割れに追い込み、政権交代を目指す意気込みだが…》

政権交代の可能性? 野党にとっては与党政権を倒すのが仕事だし、健全な民主主義のために政権交代は必要です。

ただし、実際にはなかなか難しいと僕は思う。

欧米なら、これだけの政治スキャンダル(「政治とカネ」の問題)を起こせば、たちどころに政権交代ですよ。

では、なぜ日本ではそうならないか? 野党が弱いから。協力態勢もつくれません。

これはもう、いろんなところでしゃべっているから、はっきりというけれど、ちょっと前に立憲民主党の泉(健太)代表(当時)と日本維新の会の馬場(伸幸)代表と3人で会う機会があった。

僕は「(政治とカネの問題で)政権交代の絶好のチャンスじゃないか。組むつもりがあるならば、国民民主党にも声を掛ける。3党が協力すれば政権交代はできる」とハッパを掛けたんだけど、結局、維新が立憲とは政策が違うから組めないと。

《立憲民主党は9月の代表選で野田佳彦(よしひこ)元首相が新代表に。総選挙での野党協力の可能性も高まったのでは》

まぁ、可能性は高まったのは、その通りでしょう。野田さんの方が(他の野党は)組みやすい。急進的でもなく、穏やかなタイプだからね。

ただし、総選挙で協力はできたとしても、連立政権となれば難しい。立憲と維新では掲げる政策が違いすぎますよ。維新は、むしろ自民と組む方が(政策が)近いでしょう。

《「政治とカネ」の問題で野党が共闘する戦略は?》

「政治とカネ」の問題はなかなか難しいんです。

〝裏金〟がどこに使われているのか? といえば、それは、選挙区の有権者と密接に交わるために公設秘書以外にも多くの秘書を置かねばならなかったり、有権者に政策を説明したりする際の飲み食いの費用に使われていたりすることがほとんど。

だから、政治家にしてみれば「得」をしたという意識は薄い。むしろ当選を果たすためには「当然の経費だ」と。そこが問題なんです。つまり、政治家は「たいした問題じゃない」と思っているし、野党も実はそのことを分かっている。

日本の法律は、こうした飲み食いの費用を一切、政治資金として認めていない。欧米では一定額まではオーケーだけど、完全に透明化が求められる、といったケースが多いわけ。

だから、もし政権交代が実現して野党が政権を取っても〝裏金〟問題は続くと僕は思う。法律を変えない限りね。

《それにしても、石破首相も野田代表も同じ67歳。刷新感はあまり…》

立憲も「安定感」を求めたのでしょうね。こちらの代表選も僕には「予想通り」でした。泉さんも悪くなかったけれど、政権交代に追い込むような迫力にはちょっと欠けていたかな。

世代交代ですか? それよりも(旧弊の中で)僕が一番問題だと思うのは「世襲」ですよ。もちろん、世襲を無くすのが簡単じゃないことは分かっています。親の跡を継ぐ世襲の方がずっとラクだからね。

これを、たとえば「親と同じ選挙区からは出られないようにする」とするのはどうでしょう。歯止めをかけるアイデアはあると思いますよ。(聞き手 喜多由浩)

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