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<独自>近大マグロを万博で提供へ、食の未来へ研究成果発信 「ハイブリッド魚」展示も

産経ニュース 2024年9月5日 14時0分

2025年大阪・関西万博の会場で、近畿大が世界で初めて完全養殖に成功したクロマグロなどを提供する養殖魚専門の飲食店を出店する。店内では近大が1970年大阪万博のレストランで養殖魚を展示した水槽も再現。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに開催される今回の万博で、水産資源の確保に向けて取り組んできた養殖研究の成果を国内外に発信する。

近大は人工孵化(ふか)の稚魚を育てて産卵させ、次の世代へと循環させる完全養殖の研究に取り組む。平成14年には世界で初めてクロマグロで成功。これまでにマダイやブリ、カンパチなどのほか、昨年には資源の枯渇が指摘されるニホンウナギでも実現している。2種類の魚を掛け合わせ、味の良さや成長の早さなどの特長を併せ持つ養殖向けの「サラブレッド魚」(交雑魚)も開発している。

関係者によると、近大は水産資源の保護活動で協業するサントリーホールディングス(HD)と「人生で初めて食べる魚に出会う」をコンセプトに万博会場で共同出店。近大水産研究所が和歌山県串本町の沖合などで育てている完全養殖のクロマグロを提供する。クエとタマカイを掛け合わせた「クエタマ」や、イシダイとイシガキダイを掛け合わせた「キンダイ」なども味わえるという。

店舗は万博会場の水辺が整備されたエリア「ウォータープラザ」の商業棟に出店する。約110席を設け、万博期間中に毎日営業。近大とサントリーHDが東京都や大阪府で展開している、養殖魚専門料理店「近大卒の魚と紀州の恵み 近畿大学水産研究所」の〝万博会場店〟となる。

近大は前身の大阪理工科大時代、日本が戦後の食糧難に直面していた昭和23年から、創設者で初代総長の世耕弘一(こういち)氏による「海を耕せ」の号令の下、養殖の研究を開始。クロマグロの研究開発は大阪万博が開催された45年から、水産庁の事業の一環で始まった。

一方、45年の万博では、会場内の「水中レストラン」の水槽でキンダイなどの交雑魚を泳がせ、日本の養殖技術をアピール。メニューの中では、養殖魚を《将来の水産資源確保の上からも貴重》と伝えた。

今回の万博でも、店内の水槽で交雑魚のキンダイやクエタマなどを展示する予定。国内外から訪れる来場者に「新しい食の可能性や、多様な生物資源を活用した未来の食文化」を発信したい考えだ。(宇山友明)

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