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神宮外苑再開発で「100年の森」内苑樹木と混同か…都知事選争点も事業見直しは困難

産経ニュース 2024年6月27日 18時10分

東京都知事選(7月7日投開票)の争点の一つに、明治神宮外苑(新宿区など)の再開発事業が浮上している。外苑の樹木の伐採が主な論点で、主要候補者の意見は割れているものの、神宮内苑の「100年の森」の樹木と混同していると受け取れる発言もある。再開発は民間事業のため、都が現在、事業者側に求めている樹木保全策が提出されれば事業を止めることは困難な状況だ。

内苑と外苑

明治神宮外苑の再開発は、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて新築し、商業施設などが入る高層ビル2棟を建設する計画。工事に伴い、外苑の「シンボル」である4列のイチョウ並木を保全しつつ、その他743本の樹木を伐採する。

再開発は、事業者の一つである宗教法人明治神宮の運営を維持する目的もある。神宮内苑(渋谷区)の公益事業は、外苑にあるスポーツ施設などの収益で成り立ってきた。このため老朽化が進む外苑内の施設の建て替えは急務となっている。

異なる目的

「100年かけて先人が守って育んできたものを伐採して植樹しても、育つのに100年かかる」

無所属新人で前参院議員の蓮舫氏(56)は、都知事選告示前日の19日に日本記者クラブが主催した記者会見で、植樹などで外苑の樹木数が再開発前より増えるとした無所属現職の小池百合子氏(71)の意見に、こう反論した。

蓮舫氏や再開発に反対する住民らは、神宮外苑の創建(大正15年)から約100年がたつ樹木の伐採に異議を唱える。ただ、外苑は創建当初から神宮球場や相撲場などの施設があり、往来に面した部分もあるため、常に人の手が入っていた。

これに対し、神宮内苑の森林は「100年の森」といわれ、明治天皇と昭憲皇太后を祭る鎮守の森を造成すべく大正9年の創建に当たり約10万本が献木された。100年先も森であり続けるよう、専門家を交えて構成木を決めるなどして自然のまま育まれ、成長した約3万6千本が生い茂る文字通りの「森林」となっている。

宗教法人明治神宮は「同じ『100年』でも、内苑の森と外苑の木々は植えられた目的が異なる」とする。

「争点でない」

「争点になると言ったが、なりません。なぜなら今、立ち止まっているからです」。小池氏は19日の共同記者会見で、再開発は「いったん立ち止まる」べきだと主張する蓮舫氏に、こう気色ばんだ。

再開発事業は、都が昨年2月に施行を認可し同3月に着工。同9月、都は事業者側に対し、樹木の伐採前に保全策を提出するよう要請した。

保全策は今も未提出で、他の工事は進んでも樹木が伐採されていないことから、小池氏は「立ち止まっている」との認識を示す。ただ、蓮舫氏はすでに実施された環境影響評価(アセスメント)などの再検証を公約に掲げ、工事全体を見直すことを示唆している。

アセスメントの再実施については、都の環境影響評価条例で、樹木保全策の内容が「環境に著しい影響を及ぼすおそれがあると認めるとき」に求めることができると定められている。

都幹部は「条例にある『著しい影響』は、新たに構造物が見つかるなど想定外の事態が発覚した場合のことだ。恣意(しい)的に解釈すれば手続き上は可能でも、職権乱用のそしりは免れない」と指摘。保全策が提出されれば、誰が新たな都知事になっても、伐採を止めることは法令上難しいとの認識を示した。

再開発事業を巡っては、無所属新人で前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)は「広く街づくりの発想として人と自然の調和は重視していくべきだ」、無所属新人で元航空幕僚長の田母神俊雄氏(75)は「神聖なものはできるだけ残して、もとの形を守っていった方がいい」との認識をそれぞれ示している。(楠城泰介)

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