ボディービルやフィットネスの世界一を決める世界大会が16日、東京都江東区の有明コロシアムで開幕する。アンチドーピングといった日本の取り組みが実り、初めての世界大会開催を実現した。日本ではトレーニングブームが浸透してきており、関係者は、大会を機に、さらなる裾野の広がりを期待している。
日本で初開催「取り組み評価された」
ボディービルは「ボディービルディング」の略称で文字通り、自らの肉体を芸術作品のように見立て「美しさ」と「たくましさ」を築き上げるというものだ。源流は古代エジプトやギリシャとされるが、バーベルなどを使って肉体を鍛え、競技会を開くなど普及したのは20世紀初頭のことだったとされる。
その後、何度かの変遷を経て、戦後に国際ボディビルダーズ連盟(IFBB)が設立。毎年世界大会を各国持ち回りで開いている。日本では昭和30年に、日本ボディビル・フィットネス連盟(JBBF)の前身が立ち上がり、1982(昭和57)年にIFBBに加わったという。
そして今回初の世界大会「IFBB世界フィットネス選手権&男子ワールドカップ」の誘致に成功。その理由について、「日本ボディビル選手権」9連覇、元世界王者のJBBF理事、鈴木雅さんは「日本の取り組みが評価された」と語る。
薬物を排除し結果残す
ボディービルの世界では「薬物の使用」は禁止だ。だが、筋肉増強剤などを服用するケースは少なくない。日本ではJBBFが«健康増進としての筋力トレーニング»を掲げ、薬物を排除。その中で、アジア大会や世界大会で着実に結果を残してきたという。それが実って初の世界大会開催にこぎつけた。
日本では、動画サイトなどで情報が得やすくなったこともあり、トレーニングブームが浸透。また、プロテインといったツールもひと昔前に比べ手に入りやすくなり、鈴木さんは「裾野が広がっている」とする。
経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、フィットネスジム利用者数は新型コロナウイルス禍で一時大きく落ち込んだものの、回復傾向にある。
こうした中での世界大会開催。鈴木さんは「趣味や健康を目的とするトレーニングもあれば、競技として世界のトップを目指すトレーニングもある。幅広さを知ってもらうきっかけになれば」と話している。
ポーズを審査、「推し」に掛け声も
JBBFによると、競技の種目は、評価する筋肉などによって計30に分かれ、さらに、年齢や体重、身長別で競う。審査基準は筋肉の大きさやバランス、ポーズの流れや美しさなどがあるという。選手は壇上に上がって司会者の指示で規定のポーズを取るほか、種目によってはフリーポーズも行い、審査を受ける。
日本では審査員の気を引くために観客が「キレてる!」などと応援する選手に投げかける掛け声も〝風物詩〟となっている。
日本で初開催される今回の世界大会には、40カ国超の600人以上がエントリーする。鈴木雅さんによると、自国開催で移動による体調への負担が少なく、日本選手に有利だという。
日本選手は113人が出場。注目の一人は臀部(でんぶ)や太ももなど下半身の筋肉の大きさを評価する女子「ウェルネス」に出場する大谷美咲選手だ。10月のスペインで開かれた大会で優勝するなど「世界でも基準となる選手」(鈴木さん)という。
ロングイブニングドレスなどの衣装を着て全体美を競う「フィットモデル」の安井友梨選手も注目される。男子は、細いウエストなどを評価する「クラシックフィジーク」の五味原領選手や究極の筋肉美を競う「ボディビル」の木澤大祐選手の活躍が期待されている。(大渡美咲)