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まさか友達が…大学進学を断念する 受験料を盗まれるも「仕方ねえな」と 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<10>

産経ニュース 2024年11月10日 10時0分

《高校野球の強豪・東北高校で甲子園を目指すも、野球部員以外の不祥事で無期限の対外試合禁止に。この処分に納得できずに退学。プロ野球選手という夢が断たれた》

地元・福島の高校に入りなおし、大学進学を目指しました。東京近辺の10校くらいに受験料を納めたのですが、実際に受けたのは2校くらい。試験会場までたどり着けなかったんです。初めて行くんで訳が分からないんですよ。おやじが福島県庁に勤めていたので上野にあった公務員宿舎みたいなところに泊まったのですが、乗り継ぎがよく分からない。スマホはおろか携帯電話もない時代、駅の路線図で確認するしかなかったんで。

神奈川大の入試のときは横浜駅で私鉄に乗り換えたのですが、車内は満員のうえ、最寄り駅に着いたらわーって人が乗ってきて降りられず。次の駅でもまたわーって。2つ3つ乗り越して、間に合わなかった。どこかの大学ではギリギリで試験会場に着いたら、係員さんが「こっちですよ。ここで待っていてください」って誘導してくれた。のんきに構えてたら、いつまでたっても答案用紙が配られない。おかしいぞ、と聞いてみたら「父兄の控室です」と。受験すらできませんでした。

会場に着いたら入試が行われていないなんてことも。あれは日にちを間違えたのかな、会場を間違えたのかな…。僕は高校で1年ダブっていて、同級生はもう東京で大学生になっていた。で、上野に友達が来るんで、お酒を飲みに行っちゃうんです。受験よりも楽しいな、って。未成年でしたが…。

《東京での浪人生活が始まった》

予備校は辛(つら)かったですね。何が辛かったかというと寮に入ったんですが、予備校と寮が向かい合っているわけです。で、予備校から寮が見える。みんな勉強しているならば、僕も頑張らなきゃ、って思う。でもみんなゴロゴロしていて、ボールか何かを天井に向けて投げているんですよ。あれを見ているときが一番辛かった。やってられねえな、と。あとは寮の食事では肉が出る。僕は肉が食べられないんですよ。それで寮を飛び出すことにしたわけです。

鬼子母神にアパートを借りました。学習院大に近かったから。で、昼間は学習院大でうろちょろしていました。学食とかね。自分が一番行きたかったのが学習院大だったんです。そこでお嬢さまと出会って、なんてことが夢でした。

予備校の授業はつまらなくはなかったですね。僕の記憶では学校の先生は面白い授業はしていませんでした。でも、予備校には有名な先生がいるわけで、タレントと同じように独特な話し方をしたりして、退屈しないんですよ。予備校の先生はプロという厳しい社会の中で生きているんだな、と思いました。なぜかというと、人気がなくなって生徒が集まってこなければ、クビですからね。

《捲土(けんど)重来、いよいよ2度目の受験となった》

12月ぐらいに実家から、受験料20万円が現金書留で送られてきました。それをそのまま、4畳半のアパートの机に置いておいたんです。その当時、僕は部屋に鍵はかけていませんでした。誰でも出入りは自由なんです。僕は予備校に通ったり、お風呂に行ったり、遊びに行ったりしますからね。で、帰ってきたら、いつの間にか書留がなくなっていた。

友達と一緒に必死に探したところ、別の友達が持っていったことが分かったんです。で、僕はどうしたか。仕方ねえな、と思ったんです。友達やみんなが彼を捕まえると言ってくれたんですが、「彼にも事情があったんだろ。別に大学に行きたくはないからいいよ」と。(聞き手 大野正利)

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