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かまどの神様、信仰あつく 笠山荒神社 社寺三昧

産経ニュース 2024年9月24日 19時35分

かまどの神様である「荒神さん」は古くから各家庭で信仰されてきた身近な神様だ。奈良県桜井市笠の鷲峯山(じゅぶさん)に鎮座している笠山荒(かさやまこう)神社(笠山荒神)は、「日本三大荒神」(他は奈良県野迫川村・立里(たてり)荒神、兵庫県宝塚市・清(きよし)荒神)の一つに数えられる。

三輪山から北東方向にある笠地区は標高500メートルほどの高地で、宮中から天照(あまてらす)大神を移した「笠縫邑(かさぬいむら)」の伝承地の一つともされる。名物の「笠そば」を提供する店舗の付近から北参道の鳥居をくぐると、木立の間に石灯籠が並び、森閑とした雰囲気が広がる。急な石段を上ると拝殿があり、眺望はきかないが、空が澄んで見える。

奥の本殿に祭られているのは、大地の神である土祖(つちのみおや)神とかまどの神の奥津彦(おきつひこ)神、奥津比賣(おきつひめ)神だ。「昔は火と日常生活が密着し、かまどの神様はなじみが深かった。古来の生き生きとした火の信仰を知っていただきたい」と西田享司宮司。生活に欠かせない一方で恐ろしくもある火はまさに崇拝対象だった。

石段を下り、南側へと進むと表参道で、ずらりと並ぶ灯籠があつい信仰を感じさせる。池のある閼伽井(あかい)不動の地は古くからの霊場で、神秘的な雰囲気が漂う。弘法大師・空海も高野山(和歌山県高野町)を開く前に修行したといい、そのことを知ってもらおうと最近、大師の石像も建てられた。

閼伽井不動を出て下っていくと、竹林寺(笠寺)へと着く。かつてここは南方に位置する長谷寺の奥の院とも言われ、長谷寺の十一面観音菩薩像を造ったクスノキの霊木で薬師如来像を彫って祭ったという伝承が残るなど、興味深い。笠山荒神社は明治の神仏分離まではこうした寺と一体だったという。

現在、寺の収蔵庫には重要文化財の薬師如来立像(平安時代)や県文化財の地蔵菩薩立像(鎌倉時代)が安置され、年3回の荒神大祭で公開される。大祭では神楽の奉納や神輿の渡御もあり、荒神信仰が息づく高地は参拝者でにぎわう。(岩口利一)

笠山荒神社

奈良県桜井市笠2415。1、4、9月の各28日に大祭があり、収蔵庫の薬師如来立像(重文)などが公開される。拝観料300円。問い合わせは、1、28日と土日曜、祝日に対応。(0744・48・8312)。

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