――橋下徹大阪市長というと、東日本大震災のがれき処理が各地で進まないのは「全ては憲法9条が原因」とも言っています
渡辺 彼が一番いいのは「憲法改正に必要な衆参両院の賛同を3分の2から2分の1に緩和する」と言ったことだ。最初から9条でなくてもここ(96条)を変えるだけで大変意義がある。もちろん集団的自衛権の行使も認めるべきだし、9条も変えた方がいい。特に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」と哀れみを請うような前文は取り換えた方がいい。
――読売は平成6年に初めて憲法改正試案を発表した。産経も現在、試案を作成中です
渡辺 産経も作ってくれるというので、ほっとしている。読売だけじゃしようがない。(新聞社が)新しい案を出すのが当たり前となれば政治も動く。
――渡辺主筆は鳩山由紀夫元首相、菅直人前首相の2人に比べ野田佳彦首相を評価していますね
渡辺 前の2人は絶えずぶれていたね。2人ともとにかく調子がよくて、命を懸けてもこれをやるという迫力を全然感じなかった。あんな人たちに延々と首相をやられたら日本は滅びる。一方、野田さんははっきりモノを言う。「確実にこれはやります」と。消費税増税もTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)も原発再稼働も、彼ならやる気持ちがあると思う。
――消費税増税は新聞業界にも大きく影響します
渡辺 これは新聞は(部数が)減るんだ。間違いない。だから中曽根康弘内閣のときに5%の売上税を導入しようとした際には、新聞を非課税にするようひざ詰めで交渉した。首相執務室で中曽根さんは「新聞は日本の頭脳にとってコメです」と言って了解してくれた。ところがこれは当時公にできなかったので、読売以外の全紙が売上税に反対した。欧州では新聞、雑誌は軽減税率の対象で、英国は新聞は非課税ですよ。活字文化は大事だから。
――聞きにくい話ですが、産経が実施したアンケートでは「リーダーにしたくない」人物の1位が鳩山氏、2位が菅氏、3位が民主党の小沢一郎元代表で…
渡辺 4位が渡辺恒雄。悪名は無名に勝るというが、ネガティブ評価もなきゃおかしいですよ。人間には嫉妬もある。僕も何もしないでいればいい人といわれたかもしれないが、それじゃジャーナリストといえないね。 (阿比留瑠比)