国家公務員総合職試験,一般職試験に合格すると,その主な職場は「国の行政機関」である1府12省庁,つまり,内閣府および11省+国家公安委員会(警察庁)となる。さらに各省の下には外局である庁や委員会が置かれており,地方に出先機関を設けている省庁も多い。国家公務員の職場は実に幅が広いといえるだろう。それぞれの官庁が取り組んでいる仕事内容や課題などを紹介する。
〈社会全体のDXを推進〉国や自治体のデジタル化は今までにもさまざまな取組みがなされてきたが,省庁や自治体によって対応が異なり,必ずしも統一的・標準的な形にはなっていなかった。そんな中,新型コロナウイルスへの対応,甚大な被害をもたらす自然災害の増加により,煩雑な手続きや給付の遅れなど,デジタル化における課題が顕在化した。そこで,これらの問題を根本的に解決し,国民の生活の幸せにつながるサービス提供を行うため,内閣に直属する組織として2021年9月1日にデジタル庁が設置された。
デジタル庁は,デジタル社会の形成に関する内閣の事務を内閣官房とともに助けることを任務の一つとしており,行政各部の施策の統一を図るために必要となる事務を担う。
同時に,(i) デジタル社会の形成に関する重点計画の作成および推進,(ii) 個人を識別する番号に関する総合的・基本的な政策の企画立案等,(iii) マイナンバー・マイナンバーカード・法人番号の利用に関することならびに情報提供ネットワークシステムの設置および管理,(iv) データの標準化,外部連携機能,公的基礎情報データベース(ベース・レジストリ)に係る総合的・基本的な政策の企画立案等,(v) 国・地方公共団体・準公共部門の民間事業者の情報システムの整備・管理に関する基本的な方針の作成および推進など,デジタル社会の形成に関する事務を担う。
このようにデジタル社会形成のために必要な事務を担うデジタル庁は,「GaaS(Government as a Service/Government as a Startup)」というスローガンを掲げていたとおり,スタートアップ企業のような異例の短期間で立ち上がった。
〈デジタル庁の組織,業務内容〉デジタル庁はプロジェクトベースでの組織づくりを進めており,いわゆる局や課を設ける組織構造にはしていない。以下,いくつかの業務内容について紹介する。
プロジェクトの一つに,社会基盤となるマイナンバー制度の利活用が挙げられる。マイナンバーカードの申請数は現在約9,500万件と,国民の4分の3を超える申請数に達し,デジタル社会において一番便利で安全な本人確認ツールとして広く認知されるようになった。マイナンバーカードは,コンビニでの住民票交付,健康保険証としての利用, マイナポータルと連携することによる各種行政手続(引越手続きなど)のオンラインでの実施など,その利用シーンは拡大しており,日常生活においてさらなる拡大が期待される。
マイナンバーカードを中心とした便利なサービスを広げるために最も大事なことは「利用者にとってやさしいサービス」にすること。「サービスを使える人を増やす」「サービスを使えるシーンを増やす」だけではなく,「サービスの使いやすさ」を追求する。「利用者中心のサービス」を徹底することによって,結果としてマイナンバーカードの利用数の増加に繋がっている。
各自治体の基幹業務システムにおける共通基盤を提供するガバメントクラウドも重要なプロジェクトの一つである。その背景にあるのはセキュリティの課題。今までのように各自治体が自前でシステムを管理し,セキュリティの問題が起きてから対応に乗り出していては,最新技術にキャッチアップすることは困難であり,個々の組織の状況を考慮しながら基盤の整備を進めている。
DX を実現するには多様な人材が力を合わせることが大事であり,事実,社会全体のDXをめざすデジタル庁では,官庁と民間,文系と理系に関係なく一つのチームを組み,社会全体のデジタル化という目標に取り組んでいる。最新技術に触れ,行政を横断する視点でDXに取り組むことがデジタル庁の特色だといえる。
人事データ
配属・移動
総合職・一般職ともに,さまざまなチームに配属されながらキャリアパスを歩む。令和4年から新規採用を開始したところであるが,今後,他省庁等との人事交流をはじめ,民間企業への出向,国内外大学等への留学制度の活用,国際機関等への派遣などを検討している。
昇任
キャリアパスについては,本人の適性を踏まえ,能力・実績等に応じ昇任していく。
採用動向・採用予定
令和5年採用は,総合職6人,一般職(大卒程度)8人となっている。令和6年度も区分にとらわれず採用予定。
(公務員試験受験ジャーナル 公務員の仕事入門ブック・6年度試験対応・記事内容を一部編集しています)