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単発の「介護助手」をアプリでマッチング 大阪で全国初、継続雇用につながった例も

産経ニュース 2024年8月17日 17時28分

高齢化で介護サービスの需要が増加し、介護人材不足が深刻化する中、介護に携わる仕事へのハードルを低くしようと、「大阪介護老人保健施設協会」(大阪市天王寺区)が今年度から、単発・短期アルバイトの求人アプリを通じて地域の人を募集し、専門資格を必要としない「介護助手」として働いてもらうための全国初のマッチング支援事業をスタートした。継続的な雇用に結びついたケースもあり、同協会は「モデル事業として全国に広げたい」としている。

送迎ドライバーや調理補助として

介護助手は、資格を持つ介護福祉士らがより専門的な業務に特化できるよう、主に身体介護以外の業務を担う。令和6年度の介護報酬改定で創設された「生産性向上推進体制加算」で算定要件の一例として挙げられるなど、介護現場での活用が期待されている。

今回の取り組みには、介護事業に必要な記録ソフトなどを手掛ける「ワイズマン」(盛岡市)と、求人アプリを展開する「シェアフル」(東京都港区)が協力。協会は、各施設が介護助手を募集しやすいよう業務の切り分けを支援し、介護資格が不要な送迎ドライバーや調理補助、清掃などの求人を単発・短期アルバイトの求人アプリ「シェアフル」に掲載できる枠組みを整えた。

ワイズマンによると、これまでに大阪府内の10施設が求人を出し、4施設で求職者とのマッチングが成立。20~60代の男女計7人が送迎ドライバーや調理補助として働き、一部は継続的な雇用につながったという。

同社の担当者は「採用にかかる時間を短縮でき、施設の負担が軽減できる」と説明。協会は「これまで介護と接点のなかった層にもアピールでき、人材確保につながる」としている。

働きぶりを確認して打診

大阪市淀川区の「淀川介護老人保健施設ハートフル」では、今回のマッチング支援を使い、これまでに送迎ドライバーとして20~60代の男性4人を採用。うち2人が長期雇用となった。

フリーで写真撮影などを手掛ける一由(いちよし)晃三さん(68)は、本業と両立できるアルバイトを探すために求人アプリを検索し、ハートフルの募集を知った。当初は単発で数回働ければと考えていたが、施設から「長期で働いてほしい」と打診され、快諾。現在は週3~4回働いている。

送迎車の運転だけでなく、介護専門職と連携し、リフトを操作して車いすの人を車両に乗せることもある。初めての仕事で気を使うことも多いが、「高齢の利用者を不安にさせないよう、丁寧な運転を心がけている」とほほえむ。

ハートフルを運営する社会医療法人の病院事務長、天野博さんによると、送迎ドライバーが見つからず、過去には自らハンドルを握ったことも。従来の募集は長期雇用を前提にハローワークや求人サイトを通じて行っていたため、求職者に面接して採用に至るまでに2~3週間ほどの時間がかかっていたという。

だが、単発・短期のアルバイトを募集する求人アプリ「シェアフル」で募集すると数日で応募があり、1週間以内に採用が決定。運転技術や人柄、働きぶりなどを確認した上で、長期雇用を提案できるメリットもあり、天野さんは「急に欠員が生じても、アプリを利用すればすぐに応募があるだろうと思うと安心感がある。若い層にもアプローチできた」と手応えを語る。

2年後には介護職25万人不足

厚生労働省の推計では、令和8年度には介護職が全国で約240万人必要となり、約25万人が不足する。大阪府の必要数は、東京都、神奈川県を上回る約21万5千人で、都道府県別で最多となる見込み。高齢者数がほぼピークになる22年度には必要な介護職が約272万人になると推計され、厚労省は介護職の処遇改善などを進める。

大阪介護老人保健施設協会の木場康文事務局長は「介護のプロでなくてもできる仕事を介護助手に任せれば、介護職は専門性を生かした仕事に集中できる。それによって職場への定着率も上がる」としている。(吉田智香)

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