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巨大カップ 人工島と共に変遷 UCCコーヒー博物館 昭和100年 まちの今昔

産経ニュース 2024年12月28日 11時0分

来年4月開幕の2025年大阪・関西万博と同じ関西で、43年前に開かれ、注目を集めた博覧会がある。昭和56年に神戸港に造られた人工島、ポートアイランド(神戸市)のまちびらきに合わせ開催された地方博覧会「神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア′81)」だ。同博覧会の企業パビリオンとして唯一現存する「UCCコーヒー博物館(旧・UCCコーヒー館)」は、レジャースポットとして人気を集め、ポートアイランドの変遷とともに歩んできた。

地方博で注目

「ポートピアに足を運んだ世代で、UCCコーヒー館が印象に残っている人は多いのではないか」。UCCジャパンサステナビリティ経営推進本部コーヒーアカデミー学長で、同館館長も務める栄秀文さん(63)は、そのインパクトの大きさをこう推測する。

海上都市作りの一環と位置付けられた神戸ポートアイランド博覧会は、昭和56年3月から約半年間開かれ、会期中約1610万人が来場。ポートアイランドの名を国内外に知らしめた。旧・UCCコーヒー館は同博覧会のパビリオンとして出展。個性豊かなパビリオンが並ぶ会場で、巨大なコーヒーカップ型のパビリオンが大きな注目を集めた。

同パビリオンでは世界のコーヒー文化を紹介。会期中約460万人が来場した。また、パビリオンの隣接ステージでは、南米を中心としたコーヒー生産国の歌やダンスなどが連日披露され、計約80万人の観客を動員。地方博でありながら国際色豊かな博覧会としての評判を高め、ポートアイランドの存在感をアピールした。

震災乗り越え

博覧会閉幕後、多くのパビリオンが解体・撤去される中、UCCグループの創業者、上島忠雄氏の「コーヒーのすばらしさを一人でも多くの人に伝えたい」とする強い思いから、「パビリオンの躯体を活用した大規模改修に着手した」(栄さん)。改修中、世界中からコーヒー関連の展示品を集めるなど、開館準備を進め、昭和62年10月、UCCコーヒー博物館として生まれ変わった。平成7年1月17日の阪神・淡路大震災では、ポートアイランド内の至る所で液状化現象が発生。同館も液状化現象に見舞われたが、被災地の文化復興を目指し、約2カ月半で復旧再開した。

その後、19年にコーヒーを体系的に学べる教育機関「UCCコーヒーアカデミー」を館内に開校。25年には館内展示室を全面改装するリニューアルを実施した。

こうして同館も前身のUCCコーヒー館同様、ポートアイランドの観光スポットとして人気を集め、新型コロナウイルス禍の緊急事態宣言で休館を余儀なくされた令和2年4月までに約160万人が来館した。

訪日客需要も

一方、ポートアイランドもこの間、海上都市として発展。10年から震災復興事業として先端医療技術の研究開発拠点整備を開始。島内を無人で走行するポートライナー「医療センター駅」周辺は研究機関や病院、医療関連企業が集積する国内最大級の医療産業クラスターに成長している。 また、18年2月にはポートアイランドの沖合に神戸空港が開港。来年4月には国際チャーター便が就航する予定になっており、インバウンド(訪日外国人客)の窓口として、地元経済界などから大きな期待が寄せられている。

栄さんも「ここにコーヒーの博物館があるということは、インバウンド需要の観点からも大きいのかなと思う」という。また、「もともとコーヒーは薬だった。現在、世界中の大学や研究所がコーヒーがもたらす健康や美容効果の研究をしている。ポートアイランドが先進医療の場所になっているので、将来的にはそういうところと何か一緒になってできることがあれば」と話している。

現在、UCCコーヒー博物館は令和2年4月から休館継続中だが、UCCコーヒーアカデミーの受講者やセミナーの参加者などは館内の見学ができる。(香西広豊)

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