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「足跡から被害者の痛み取り除く」 大阪府警初の女性「足痕跡副鑑定官」誕生

産経ニュース 2024年10月11日 11時11分

事件現場の足跡から犯人特定に向けて鑑定書を作成する大阪府警の「足痕跡副鑑定官」に、鑑識課足跡係の係員、上野梓(あずさ)さん(32)が10日付で任命された。高い専門性が必要な副鑑定官に女性が就くのは府警で初めて。事務業務がメインの一般職員として入庁しながら刑事事件に関わりたいと技術を研鑽(けんさん)し続けてきた。「自分の力で少しでも多くの犯人を捕まえるきっかけになれば」と重責の全うを誓う。

「手袋をつけると指紋は現場に残らない場合もあるが、足跡は必ず現場に残る。足跡から被害者の心の痛みを少しでも取り除きたい」。上野さんは副鑑定官を任命された10日、報道陣を前に力強く語った。

大阪府岸和田市出身。大学の法学部で学び、平成27年に一般職員として府警に採用された。警察署の会計課に配属され、事務業務などを行っていたが、幼いころから事件を捜査し解決に導く刑事の仕事へ憧れがあった。かつて足跡係に在籍していた当時の上司から「一般職員でも刑事事件に関われる」と聞き、足痕跡鑑定への道を志した。

足痕跡鑑定官は、現場で採取された足跡から靴のメーカーや種類を特定し、容疑者の摘発につなげる重要な役割を持つ。鑑定官や副鑑定官が作成した鑑定書は犯人性を示す証拠として裁判でも使われ、事件の立証のため、何度も見比べる根気のいる仕事だ。鑑定官や副鑑定官になるには一定の実務経験が認められ、警察庁法科学研修所で研修を受けた上で府警本部長が指定する。

鑑識課の足跡係に31年、係員として配属されたが、当初は「ほこりと靴の模様の判断すらできなかった」。それでも年間千件以上の足跡に目を通し、鑑定技術に磨きをかけていった。

2年前、女子大生が顔を蹴られる事件に携わった際には、女子大生の顔や路上から集めて鑑定した足跡が、証拠品として法廷でも使われた。「足跡から犯人を有罪にでき、被害者の心の痛みを取り除く一助になった」。こうした経験を通じ、足痕跡鑑定が果たす責務と達成感にますます魅了されていった。

これまでの実績と技量が認められ、今回府警で女性初の副鑑定官に任命された上野さん。上司の矢野登志夫・鑑識課長は「同じ作業でも根気強くきめ細かに行っている」と評価する。新たな一歩を踏み出した上野さんは「多くの女性が足跡の魅力を知り、足跡係を希望する人が増えてほしい」と笑顔で話した。(木下倫太朗)

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