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大阪・吉村知事の「ノースーツ宣言」で大注目 自治体の「服装自由化」とNGファッション

産経ニュース 2024年12月19日 8時0分

大阪府の吉村洋文知事が職員の服装について「ノースーツ」を宣言し、府では12月9日から通年軽装化が導入された。働きやすい服装を呼びかけるもので、SNS(交流サイト)上では「清潔感があればいい」「ノンストレスで働いて」と歓迎する意見が多い。こうした動きは大阪府以外の自治体にも広がっている。

トップが自ら意思表明

「皆がみんな、スーツを着なければならないわけじゃない。自由な服装で働きやすい方がいいじゃないか」

吉村氏は11月20日の大阪府戦略本部会議の場でこう述べ、「ノースーツ」を呼びかけた。気温に合わせた服装で仕事の効率を上げていくことを目指す狙いだ。

この発言を受け、府庁では12月9日から職員の通年軽装化を開始。さっそく吉村氏もタートルネックにジャンパー姿で記者団の取材に応じ、「率先垂範してノースーツで仕事をする」と強調。この日の府議会一般質問でもこの服装で答弁した。

府人事課によると、職員の服装を具体的に定めたルールはこれまでなかったという。内規で「相手に不快感を与える華美、だらしのない格好は控える」とあり、そうした格好をしないよう指導する指針があるだけだった。

〝お堅い〟イメージの強い公務員だけに、一般府民にはフォーマルな服装を求める意識も残る。吉村氏は「対外的に方針を明らかにすることで、職場が働きやすい環境となればいい」と語り、トップの意思表明が必要と考えたようだ。

一方、どのような服装ならOKなのか職員側に戸惑いもあり、府人事課では目安を設けている。軽装に含まれないものとしては、タンクトップや短パン、極端に丈の短いスカートを挙げた。

職員がサンプル着て発表

こうした軽装の通年化を導入した自治体は大阪府にとどまらない。

今年2月、福岡県行橋市は「パブリックカジュアル」と名付けた服装自由化を開始。3月末までは試行だったが、新年度に切り替わった4月から正式に導入した。市総務課の担当者は「職員の多様性や働きやすさを実現し、市民全体のウェルビーイング(幸福・福祉)の向上を目指した」と説明する。

東京都東村山市では職員からの提案という形で、9月から服装自由化を始めた。これまで黒色のワイシャツやジーパンなどを好ましくないとNGにするマニュアルがあったため、具体的な服装の基準はつくらなかった。職員の自主性に任せ、職場風土をよくする目的があるという。

ただ、どんな見た目なら受け入れられるのかイメージできるようサンプルの服装を実際に職員が着た記者発表も行った。

こうした服装の自由化が浸透する背景には、クールビズ、ウォームビズの定着もある。11月から軽装を通年化した大阪市の担当者は「何も呼びかけがない期間が2カ月しかなかった」と説明する。昨今の気候変動もあいまって、気温に合わせた服装の呼びかけがない月は4月と11月だけになっていたという。

実は関西発祥の文化

実はクールビズの原点ともいえる取り組みは関西発祥だ。官民でつくる関西広域連携協議会が平成11年、冷房の適正温度と軽装化を呼びかけた「関西夏のエコスタイル・キャンペーン」で、ノーネクタイとノージャケットを推進した。

それから四半世紀。スーツから脱却する社会の流れが浸透してきているが、文化学園大の田中里尚(のりなお)教授(服装文化史)は「スーツは必ずしも押し付けではなかった」と指摘する。

戦後の日本社会において、詰め襟だった礼服や軍服に対し、襟が開いたスーツは民主的で開明的なイメージで受け入れられた。「一着あれば着回しができ、着こなしも慣れれば容易で、利便性が高い。社会的立場や地位も表せる効率的な服装だった」と説明する。

最善の選択肢だったため、スーツは文化として根付いた。だが「定着する過程にいなかった世代にとっては規範として作用していった」という。

それだけ強固になっていたスーツ文化からの脱却。田中教授は「服装の自由化を別の規範と感じるようにならないよう、世代をまたいでも共通認識を伝えていくことが大切だ」と語った。(藤谷茂樹)

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