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建設ラッシュのバスケBリーグアリーナ 松山市悩ます「予算・運営・経済効果」の3つの壁

産経ニュース 2024年12月1日 10時0分

松山市が令和8年に発足するプロバスケットボールリーグBリーグの新トップカテゴリー「Bリーグ・プレミア(Bプレミア)」対応のアリーナ建設に乗り出した。Bプレミアへの参入には5千人規模のアリーナ整備が必要で、チームを抱える全国の自治体では建設ラッシュが続いている。市も11月、有識者らを集めた検討会を立ち上げ、野志克仁市長の意向に沿って再開発が進むJR松山駅周辺でのアリーナ整備に向けて議論を始めた。しかし、予算規模や運営体制、完成時期など不明確なところも多く、紆余曲折(うよきょくせつ)が予想される。

一大プロジェクト

JR松山駅周辺の再開発は、市の玄関口となる約16・7ヘクタールのエリアを大規模リニューアルする一大プロジェクト。平成20年に事業計画が決まり、駅舎の建て替えや線路の高架化、駅前広場の整備などが進められている。

市は27年に駅南側の取得予定地(約9250平方メートル)に「文化創造」や「賑わい交流」などの機能を備えた施設を整備する方向性を打ち出した。今年4月から基本計画の策定に着手。2千席程度の劇場型ホールと800席程度の多目的ホールなどの設置を想定し、公募型プロポーザル方式で事業者提案を募集した。

そんな中、地元経済団体がBリーグ対応を視野に入れた5千人規模のアリーナ整備を要望。文化団体からも100人規模の小規模ホールを求める要望が寄せられた。6月に事業者が決まったが、提案内容は非公表に。基本的な施設概要や事業費なども示されなかった。

JR松山駅の新駅舎開業を目前に控えた9月、野志市長は臨時記者会見を開き、「アリーナと小規模ホールの両方の実現を目指したい」と表明。協議会を設けて検討を進めていく方針を示した。

リーグ再編が起爆剤

全国では大規模アリーナの建設が進んでいる。千葉県船橋市では令和6年4月に約1万1千人収容の「らら東京ベイ」が完成。神戸市でも約1万人収容の「ジーライオンアリーナ神戸」が7年4月に開業するほか、秋田県、川崎市、京都府向日市などもそれぞれ10年中に新アリーナの完成・開業を予定している。

アリーナの「建設ラッシュ」の起爆剤となったのは、Bリーグのリーグ再編。8年に発足するトップカテゴリー「Bプレミア」への参入には、5千人以上収容でVIP席などを備えたアリーナの確保などが条件となる。

松山市ではリーグ2部の愛媛オレンジバイキングスが活動。現在のホームアリーナ「市総合コミュニティセンター」は約3千人収容だが、新アリーナの建設で「Bプレミア」への道が開ける。

市にアリーナ建設の要望書を提出した愛媛経済同友会の小泉啓典副代表幹事は「先行してアリーナを建設した沖縄や群馬ではバスケの『魅せるスポーツ』化や、周辺でのイベント開催によって集客の掘り起こしに成功している」と説明。「交通結節点に位置し、市外・県外からの集客、さらに公共交通の利用促進効果も見込める。併設予定の文化機能とも共存し、必ず市の賑わいの中心施設になる」と強調する。

歓迎の一方、課題も

11月25日の検討会の初会合には、有識者や文化・スポーツ団体、経済関係者ら委員10人が出席。市側は都市整備部長など関係部局の幹部らが参加し、担当課がこれまでの経緯などを説明した。その後は非公開となり、出席者が意見交換した。

関係者によると、市側からは6階建ての建物に7千人規模のアリーナ、ホールなどを配置した図面が示された。委員はアリーナ整備を歓迎する一方、土地が手狭であることや交通渋滞への懸念、運営体制のあり方などを課題にあげた。「一体整備のため連携を取るべき県や伊予鉄グループが参加していない」「文化施設としての側面は後退している」といった苦言や指摘もあったという。

市の担当者は「賑わいや街づくり、市民、利用者などさまざまな観点から意見や要望があった。それらを次の検討会に反映していきたい」と説明した。市は今後、検討会を複数回開くほか、市民らを対象としたワークショップを行って施設に対する意見を募った上で、来年3月の基本計画策定を目指すとしている。

ただ、肝心の予算規模や完成時期なども不明確なまま。人口減少が続く中、投資に見合う経済効果が得られるかも見通せない。経済、文化団体双方の顔を立てて大風呂敷を広げた野志市長。リーダーシップが問われそうだ。(前川康二)

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