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ロシアが北海道に侵攻する日 ウクライナ侵略800日超、交流団体が実感した最悪シナリオ

産経ニュース 2024年7月10日 10時0分

ロシアによる侵略を受けて800日以上がたったウクライナ。大阪の民間交流団体が6月、同国を約1年ぶりに再訪し、現地の状況を視察した。帰国した団体のメンバーがこのほど講演し、ロシアが隣国を蹂躙(じゅうりん)し続ける状況を「泥棒が家に居座り、警察が追い出せない」と例えてみせた。ウクライナの地で戦争の悲惨さを改めてかみしめた彼らが、日本人に訴えたいこととは-。

「戦争回避に国力必要」

「絶対、戦争をしてはいけないと痛感した。隣国と戦争をしないためには国力をつける必要がある」

6月30日、大阪市天王寺区内で開かれた帰国報告会。市民ら約100人ですし詰めとなった会場で、主催した日本ウクライナ文化交流協会(大阪府八尾市)の会長、小野元裕さん(54)はこう呼びかけた。戦禍のウクライナで知人らに話を聞き、日本も人ごとではないと感じたからだ。

天理大でロシア語を専攻した小野さんは、ウクライナが「ロシア発祥の地」と知ったのをきっかけに、平成17(2005)年に同協会を設立した。日本とウクライナ両国間の交流を図る最も古い団体として、「美しい国」(小野さん)と評するウクライナを紹介する活動を草の根レベルで続けてきた。

しかし、2022(令和4)年2月、ロシアによる侵略が始まった。協会では寄付金などでウクライナ西部に避難所の建設を進め、昨年6月に現地を視察。今回も小野さんら3人が約1年ぶりの視察として、5月31日から6月9日までの日程で戦禍のウクライナを訪れた。首都キーウや整備した西部の避難所などを見て回り、現地の人たちと交流したという。

支援物資送り続ける

小野さんに同行する形で今回初めてウクライナを訪れたのが、兵庫県西宮市の社会福祉法人「すばる福祉会」理事長、西定春さん(77)。「21世紀のいま、隣の国を軍隊が踏みにじる。こんなことがあっていいのか」との思いに駆られたからだった。

西さんは平成7年1月の阪神大震災で被災。侵略が始まって以降、ロシアに対する怒りとともに、寒い冬を越すウクライナの人たちの姿が震災当時と重なった。そこで「困っている人たちに喜んでもらおう」と、使い捨てカイロを寄贈する活動を始めたという。

実は昨年6月のウクライナ訪問にも同行しようと思ったが、がんを患ったため見送った。今回、ようやくかなった訪問では、現地でカイロ寄贈に対する感謝の言葉をもらったといい、「今後もカイロを送り続けようと思う」と目を細めた。

同行したもう一人は、小野さんの妻で歌手、OnoAki(オノ・アキ)さん(53)。1年ぶりの再訪だったが、首都キーウはロシア軍の攻撃で破壊された建物跡が残る一方、修復された街並みも目にした。ただ、現地の人たちからは「また、いつロシア軍に破壊されるかもしれないので、建物工事は中止されている」といった話を聞いた。

中心部にある独立広場にも足を運んだ。戦争で亡くなったウクライナ兵らをしのぶ小さな国旗が数多く並ぶ光景に「胸が詰まる思い」がしたという。同国西部の避難所には日本のこいのぼりを贈ったが、戦時下で標的になる恐れもあり、掲揚は見送られた。Akiさんは「戦争が終わり、こいのぼりが泳ぐ日が来てほしい」と語った。

対露で日本は同じ立場

講演で小野さんは、ロシアのウクライナ侵略は2014年のクリミア侵攻から始まっていると強調した。ウクライナ人について「ロシアを追い出そうという思いが強い」とし、ウクライナの現状について「家(ウクライナ)に泥棒(ロシア)が居座って、警察(米欧などの西側諸国)が追い出せない状況だ」と表現した。

侵略の終結に向け「ウクライナ側が停戦を求めるべきだ」との一部意見に対しては「ナンセンス(無意味)」と一刀両断。ウクライナが国土の約3割を奪われた状態で停戦すれば「(西側諸国の)支援国がひくと、ロシアがウクライナ全土を攻め落とし、隣国も攻める」とのシナリオを挙げて懸念を示した。特にロシアのプーチン大統領については「(先の大戦直後に)『北海道を取り損ねた』と明言している。北海道も攻めてくるかもしれない」と警戒感をあらわにした。

長年続けてきたウクライナとの交流活動。小野さんはこんな表現でウクライナと連帯する必要性を訴えた。

「ウクライナはクリミア、日本は北方領土をとられている。同じ立場のウクライナとは手をつなぎ、ロシアを追い出すまで支援を続ける」

(西川博明)

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