北海道の鉄道地図が今春、64年ぶりに変わる。JR北海道が3月のダイヤ改正で廃止する5駅に、日本最東端の鉄道の駅として知られる花咲線の東根室駅(根室市)が入っているからだ。地元自治体が維持管理を続けてきたが、負担増で廃止を受け入れた宗谷線の秘境駅も含まれており、北の大地を走る鉄路の厳しさを浮き彫りにしている。
バス路線整備で廃止へ
廃駅となるのは東根室のほか、南幌延(みなみほろのべ)、雄信内(おのっぷない)=いずれも幌延町=、抜海(ばっかい)=稚内市=、東滝川(滝川市)の5駅。
東根室駅は昭和36年に開業。根室駅の南東に位置しており、同駅に代わって日本最東端の駅となった。無人駅ながら、鉄道ファンの「聖地」として人気があった。今回の廃止で「日本最東端」の称号は64年ぶりに根室駅に戻る。
周辺には住宅地が広がり、直近5年間(令和元~5年)の1日の平均乗車人員は7・8人と、JR北海道が廃止の目安とする3人は上回っていたが、近くの高校に通う生徒が利用するバス路線の整備が進んだことで利用者が減り、廃止が決まった。
根室駅は駅員が配置され、周囲には飲食店やホテルなどがある。根室市としては花咲線の終着駅である同駅が「日本最東端」である方が観光促進にはメリットがあり、今後のイベント開催などが期待される。
鉄道ファンがパーティー
幌延町は秘境駅をまちづくりに役立てようと、令和3年から毎年400万~500万円かけて宗谷線にある町内の5駅をふるさと納税などを活用して維持管理してきた。そのひとつの糠南(ぬかなん)駅は待合室に物置を使用しているのが特徴。周辺に民家が見えず、平均乗車人員が0・0人で最上級クラスの秘境駅として知られている。しかし、毎年12月には氷点下の中、鉄道ファンが集まり、クリスマスパーティーを開催。10回目だった昨年は100人以上が集まり、秘境駅の盛り上がりを全国に発信した。
ただ、南幌延、雄信内両駅については来年度、維持管理費のほかホームの修繕費など計約750万円がかかるため、維持を断念した。南幌延は板張りの短いホームが「朝礼台」と呼ばれ、風格ある雄信内の木造駅舎も人気だった。同町では糠南、下沼(しもぬま)、問寒別(といかんべつ)の残る3駅についても「今回と同様な多額の修繕費が発生した場合、今回の2駅と同様な結果になる可能性はある」としている。
100年の歴史に幕
大正13(1924)年に開業した宗谷線の抜海駅は昨年、100周年の節目を迎えた。築80年以上の木造駅舎を持ち、「最北の木造駅」「最北の無人駅」として親しまれている。
集落から離れたところにあり、1日の平均乗車人員は2・2人。稚内市が維持管理をしてきたが、代替交通のめどが立ったために来年度以降は維持をしないと決定。地元では映画やドラマのロケ地として使われた実績から、観光的な価値を訴え、歴史に幕を下ろすこととなった。
厳しい経営環境にあるJR北海道は廃駅、廃線が相次いでいる。同社のホームページによると、会社発足直後の昭和63年には619駅(うち有人は143駅)、鉄道営業キロは3192・8キロだったが、令和6年4月現在では322駅(有人95駅)、2254・9キロに減っている。
北海道新幹線の札幌延伸に向けて工事は進むが、開業すれば函館線の小樽-長万部(おしゃまんべ)間が並行在来線として廃止される予定で、駅の数はますます少なくなる。北海道の鉄道の縮小は止まらない。