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時刻表で発見「吉川美南」「井川さくら」「武豊」 思わず途中下車したくなる「人名駅」

産経ニュース 2024年9月29日 11時0分

時刻表の行楽臨時列車をまとめた特集ページを読んでいると特急「鎌倉」という列車を見つけた。JR武蔵野線から貨物線を経由して鎌倉に向かう珍しい経路の特急だ。そして、目についたのは武蔵野線にある始発駅の駅名。「吉川美南」(よしかわみなみ=埼玉県吉川市)。まさに人名だ。

失礼ながら、この駅の存在を知らなかった。調べてみると、開業は平成24年と比較的新しい。新駅の名前は、吉川市のホームページによると、ほかに「吉川なまずの里」「むさし吉川」も候補だったが、同市美南地区の名が入っているということで「吉川美南」に決まったという。

時刻表の索引地図で探すと、文字面で人名のような駅を何個か見つけることができる。JR日豊線の「中山香」(なかやまが=大分県杵築市)、JR湖西線の「近江舞子」(おうみまいこ=大津市)、JR奥羽線の「井川さくら」(いかわさくら=秋田県井川町)などなど。有名人の名前なら、JR武豊線の「武豊」(たけとよ=愛知県武豊町)がある。レジェンドジョッキーの武豊(たけゆたか)さんと同じ文字だ。

武豊騎手がまだ若手だったころの平成元年、同町に一日町長として招かれ、武豊駅から町役場までオープンカーでパレードしたことがあった。その後もイベントに登場したことがあり、駅名、町名を盛り上げのきっかけにした例だ。

鉄道ファンの間では昔から、となり同士の駅が姓名になる駅を探す遊びがあった。最も有名なのがJR日豊線の「重岡」「宗太郎」(しげおか・そうたろう=大分県佐伯市)。そのほか同線の「国分」「隼人」(こくぶ・はやと=鹿児島県霧島市)などがある。

JR予讃線に「五郎」(ごろう=愛媛県大洲市)という駅がある。昭和40、50年代、この駅は入場券や乗車券を買い求める多くの若い女性でにぎわったという。彼女たちは当時、人気アイドル歌手だった野口五郎さんのファン。野口さんは「私鉄沿線」というヒット曲を持つが、自分の名前と同名の駅は国鉄、JRにあった。59年に廃線となった国鉄高砂線に「野口」(のぐち=兵庫県加古川市)という駅が存在したが、こちらもにぎわっていたのだろうか。

五郎駅は国鉄時代は内子線が分岐していたが、61年の新線切り替えで普通の途中駅となった。現在は駅舎のない無人駅だが、人気観光列車「伊予灘ものがたり」が運行される日は、駅周辺に出没するタヌキにちなみ、タヌキの着ぐるみをきた地元有志らが列車のお見送りを行っている。

智頭急行に「宮本武蔵」(みやもとむさし=岡山県美作市)、井原鉄道には「吉備真備」(きびのまきび=同県倉敷市)がある。江戸時代の剣豪、奈良時代の政治家の故郷の駅としてのアピールのため、駅名の方が人名に寄せているパターンだ。(鮫島敬三)

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