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「JTB時刻表」来春で創刊100年 紙の一覧性と特集ページで検索アプリに対抗 時刻表は読み物です

産経ニュース 2024年10月13日 12時0分

現在の「JTB時刻表」(JTBパブリッシング刊)の前身となる「汽車時間表」の創刊号「大正14(1925)年4月号」が発刊されてから来春で100年を迎える。

復刻版として発売されている同号を見ると、時刻が24時間制でなく、細字が午前、太字が午後としていて読みにくい所はある。航路の時刻が載った海外連絡のページには西比利亜(シベリア)、北京、天津といった地名が並び、スケールの大きさを感じる。何といっても100年前に全国至る所に鉄道が通り、時刻表がその膨大な情報を網羅していることに驚く。

戦時色が濃かった昭和19年は年5冊、20年には1冊だけという苦難を迎えるが、発行されなかった年はないという。戦後は列車の増発、新幹線の開業、夜行列車の廃止など、さまざまな出来事を盛り込み、時代を表す一冊として歴史を重ねてきている。

そして現在の時刻表。千ページ超の中に並ぶ数字は300万から400万個といわれている。東京都江東区にあるJTBパブリッシングの時刻表編集部では通常24人のスタッフが業務にあたっている。

ページごとの担当者はJRから提供された資料をもとに打ち込まれた時刻、運転日などに間違いがないかチェック。さらにJR各社が3月に行うダイヤ改正に向けた号は前年の12月ごろから、通常号と並行して準備する。編集長の梶原美礼さんは「怒濤(どとう)の作業。編集の総力を挙げて取り組みます」。ページの校正が済み、担当が「終わりました」と声を出すと、編集部内で拍手が起きることもあるという。

創刊号に掲載された日本旅行文化協会(JTBの前身)の広告には「時間表の生命は正確に在り」という言葉がある。間違った情報は絶対に載せられない。その精神は100年後も受け継がれている。

スマートフォンが普及した現在、乗換検索アプリを使えば簡単に最速、最短ルートを知ることができる。梶原さんは「紙の時刻表がアプリと対抗できるのは一覧性」と強調する。座りたいので、利用する駅の始発の列車を探したり、途中下車して観光を楽しみたいとき、次に乗る列車までどれぐらい時間があるか調べたりという情報収集は、最速を目指している検索アプリではやりにくい。

仕事で使う人たちだけでなく、鉄道ファンや一般の人たちにも手にとってもらうべく、旅情を誘う花火大会や駅弁の紹介、最新車両の情報など読み物的な特集ページを充実させている。「時刻表は月刊誌であるので、ダイヤを載せるだけでは面白くない」と梶原さん。活字離れが叫ばれて久しいが、時刻表は次の100年も、旅行や趣味の楽しさを感じさせるものであり続ける。(鮫島敬三)

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