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ドラマ、映画の〝聖地〟巡り 「虎に翼」レトロ建築で追体験 地域の魅力発信を

産経ニュース 2024年7月1日 8時0分

大理石の中央階段、荘厳な雰囲気のステンドグラス、レトロな長い廊下…。放送中のNHK連続テレビ小説「虎に翼」の撮影地の一つになった名古屋市役所本庁舎や市政資料館が今、人気を集めているらしい。テレビドラマや映画のロケ地、アニメの舞台となった地は「聖地」とも呼ばれ、ファンにとってはあこがれの場所になる。俳優やミュージシャンなどの「推し活」が身に染みているミーハー体質。これまで数々の「聖地」を訪れた体験とともに、魅力を探ってみた。

「虎に翼」で注目

「ロケ地ってどこですか?」。今春、名古屋市役所本庁舎内に〝異変〟が訪れた。職員にそう尋ねる来庁者の姿が目立つようになったのだ。

「虎に翼」は日本初の女性弁護士の一人で、後に裁判官を務めた三淵嘉子(1914~84年)をモデルにした作品。伊藤沙莉さん演じるヒロイン、猪爪寅子が壁にぶち当たりながらも未来を切り開いていく。

そのロケ地となった同市役所本庁舎と市政資料館は、いずれも国の重要文化財。昭和8年に完成した市役所本庁舎の全長100メートルの「北側廊下」は寅子が通った大学の廊下、落ち着いた色合いの壁面が特徴的な「中央廊下」は司法省の廊下として登場した。大正11年完成の市政資料館は、ドラマの中では東京地裁だ。

SNSなどで情報が駆け巡ったらしい。来訪者は急増し、同資料館では今年4月だけでも前年比の2倍以上の人が訪れたという。

そこで市は6月、両施設を巡る「特別ガイドツアー」を開催。計80人の定員に、全国から約3500件、6600人以上の応募があった。倍率は80倍以上。市総務局総務課長補佐、助川高浩さんは「両施設は市民の財産であり、誇りでもあります。この機会に魅力をもっと知ってもらいたい」と期待する。

滋賀ロケーションオフィス

「わがまちでロケを」と、誘致を目指すロケ支援団体「フィルムコミッション(FC)」は各地に続々と設立されている。全国ネットワーク「ジャパン・フィルムコミッション」(東京)に加盟する団体だけでも現在135団体という。

「話題の作品に登場すると観光客も増え、地域のブランド力も上がります。映像の力には驚かされます」

こう話すのは、滋賀県と県内18市町で設置するFC「滋賀ロケーションオフィス」の有田高志さん。同団体は平成14年に設立され、今年3月末までに累計1900件近くのロケを支援してきた。このうち映画は230件、テレビドラマは880件にも及ぶ。

話題になった作品は多い。例えば映画「るろうに剣心」シリーズ。同団体が発行する「ロケ地マップ」を片手に、これまで私も何度も足を運んだ。

三井寺や彦根城、八幡堀、日吉大社…。「ここがあのシーンか」「どの角度で撮影したの?」と想像しながら至福の時を過ごす。この場所で撮影されたという臨場感に、わくわくが止まらない。時には登場人物になりきって写真を撮る。

森の中にひっそりとたたずむ寺院など「こんな場所があったんだ」という発見もある。製作会社とともに撮影の候補地を探すこともある有田さんも「発見の連続。魅力を掘り起こすこともできます」と話す。

顕著な経済効果が出ることもある。埼玉の地域性をいじって話題になった映画「翔んで埼玉」の続編「琵琶湖より愛をこめて」では県内5つの映画館の興行収入などが都道府県別で全国6位になった。この映画はシナリオ製作段階で同団体側が「関西でいじるなら滋賀しかない」と猛アピールをして実現。誘致支援の団体などを表彰する「第10回JFCアウォード」の最優秀賞を受賞した。

有田さんは「滋賀県には全国4位の数の国宝・重要文化財があり、古き良き街並みも琵琶湖もある」などと、PRに余念がない。

誘致し続ける

観光庁の令和5年「訪日外国人消費動向調査」によると、7・5%の訪日外国人が「映画・アニメ縁の地」を訪問したと回答。10・9%が次回に訪れたいとしている。

「ジャパン・フィルムコミッション」の事務局長、関根留理子さんによると海外作品は10億円以上の経済効果をもたらすこともあるという。観光客のほか、大勢の製作スタッフが長期間滞在し、現地での雇用も生み出す。

国内外から注目されているロケ地。「有名な建物や風景などその土地らしい場所が出ると話題になる」と関根さん。一方、「都心からアクセスが良すぎて滞在する観光客増につながらない場合のほか、一過性に終わることもある」。「誘致し続ける」という継続性も重要なのだそうだ。

1本の作品には、製作者だけでなく、そこ関わる多くの人たちの熱い思いが宿っている。(田野陽子)

50代真っただ中。まだまだ人生楽しみたいし、これからのことも気になる年代。興味のあるあれこれを深掘りします。

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