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「将軍」でエミー賞受賞の真田広之さん 幼少から日舞や殺陣などで磨いた「和」の力が結実

産経ニュース 2024年9月17日 11時24分

米テレビ界の最高栄誉とされる第76回エミー賞に、俳優の真田広之さん(63)が初プロデュースし、主演した「SHOGUN 将軍」が、主演男優賞など史上最多の18冠に輝いた。今や海外で活躍する日本人俳優の代表格だが、子役出身の真田さんの芸歴は長く、時代劇から現代劇、テレビ、映画、舞台…そして海外へと目まぐるしく活躍の場を変えてきた。その中で軸となったのが「和」の力。アクション俳優出身の身体性を生かした殺陣の魅力、そして幼少時から日本舞踊で磨いた所作だ。

アクションも日舞も

真田さんは1960年、東京都出身。5歳で子役デビューし、13歳で、千葉真一さん(1939~2021年)が世界的アクション俳優を育成しようと設立したジャパンアクションクラブ(JAC)に入団した。同時に日本舞踊玉川流で名取の腕前になるなど、幼くして殺陣や着付け、所作など和の基本を体にたたき込んだ。

1978年、「柳生一族の陰謀」(深作欣二監督)で映画デビューし、20歳で早くも映画「忍者武芸帖 百地三太夫」で映画初主演を果たすなど、整った容姿とスタント不要の身体性、洗練された和の所作で一躍、注目を浴びた。以後、映画「写楽」(1995年)、「たそがれ清兵衛」(2002年)、「亡国のイージス」(2005年)のほか、ドラマ「太平記」(1991年)、「高校教師」(1993年)など数々の主演作で、トップ俳優の地位を築いた。

英国で「リア王」転機に

時代劇からトレンディードラマまで、人気俳優として幅広く活躍したが1999年、英名門劇団ロイヤル・シェークスピア・カンパニーの舞台「リア王」に、東洋人として初出演。英語で道化役を単独で演じ、現在の海外進出につながる転機となった。のちに産経新聞の取材に「異文化同士が刺激し合っている感じ」「楽しくもがいている」と語っている。

さらに2003年、ハリウッド映画「ラストサムライ」で武士道精神をたたき込む攘夷派の武士、氏尾役を演じ、脇役ながら主演のトム・クルーズに負けない存在感を発揮。世界的に大ヒットした同作品への出演を機に、ハリウッドに移住した。

日本文化代表として

以後、「ラッシュアワー3」(2007年)で香港出身のアクションスターであるジャッキー・チェンの敵役として、初共演を果たしたほか、日本の忠臣蔵をモチーフにした映画「47 RONIN」(2013年)では大石内蔵助役で主演するなど、海外で日本文化を代表する立場で、勝負する日々を送ってきた。

特に時代劇の制作現場では、これまでの経験と人脈を生かし「日本文化代表の気持ちで」監督や美術、殺陣師ら海外スタッフにも意見を述べ続け、日本人役として不自然にならない配慮を求め続けた。その延長上に今回のハリウッド時代劇「SHOGUN 将軍」(全10話)があり、初めて制作にも名前を連ねた。戦国時代の日本を正しく伝えることにこだわり、今作では日本の時代劇スタッフも撮影現場に呼んだ上で主人公、吉井虎永役で主演した。

その結果、作品では70%が日本語のせりふとなり、字幕が多用された。「一種の賭け」(真田さん)だったが視聴者に受け入れられ、15日(日本時間16日)の発表・授賞式では「情熱と夢が海を渡り、国境を越えた」と語った。海外で約20年、「和」にこだわり続け、サムライを描いた日本人俳優の気概が、一言一言に込められていた。(飯塚友子)

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