フルーツ王国・山形県で新しく農業に従事する人が増え続けている。令和6年度調査(5年6月~6年5月)で新規就農者が昨年度比で5人増の383人となり、統計を取り始めた昭和60年度以降、最多を記録した。東北6県でみても、9年連続の首位となった。農業人口の減少が危ぶまれるなか、なぜ山形は独走しているのか。
新規就農者383人の内訳は、自ら事業を立ち上げる自営就農者が171人、雇用就農者が212人。 県によると、他の東北5県の新規就農者は福島が322人、青森と岩手が286人、秋田が275人、宮城が131人だった。
就農の形態については、新たに農地などを取得して始めた「新規参入者」が216人と最も多く、農家出身者で、ほかの仕事に就職した後に農業に就いた「Uターン就農者」が114人、学校を卒業してすぐに農業を始めた「新規学卒就農者」が53人だった。
全国的には農業従事者の高齢化も問題になっているが、山形は若手の就農者が目立つ点が特徴的だ。30代未満と30代の合計が全体の6割を占め、若者が農業へ関心を高めているともいえる。
「まだまだ足りない」
山形で就農者が増え続けているのは、単なる自然増ではなく、〝あの手この手〟の施策が徐々に浸透しているためだ。
県では令和4年度、「山形県農業経営・就農支援センター」を設置。ここでは、研修や就農先の紹介、営農プランの助言を行っている。「就農から経営の定着・発展までの一体的なサポート体制が就農者を増やしているのではないか」(県農業経営・所得向上推進課)。さらに、お試し就農体験、就農時の農機・施設の導入支援などが後押ししているとみられる。また、畜産や水稲経営の規模拡大で雇用が増加しているようだ。
ただ、新規就農者数は伸ばしている農業県・山形でも毎年、仕事として主に自営農業をしている「基幹的農業従事者」の数は1千人ほどづつ減少している。基幹的農業従事者は農業従事者の実態を表す数字と位置付けられており、楽観視はできないのが現実だ。
吉村美栄子知事は「さくらんぼやつや姫、雪若丸といったブランド米など魅力ある農産物を開発してきたことや、就農支援を行ってきたことが大きい」と自賛したものの、「まだまだ新規就農者は足りない。より多くの方に就農いただけるように取り組んでいきたい」と話した。(菊池昭光)