遠泳による横断の難易度が高いとされる世界七大海峡「オーシャンズセブン」の一つ・津軽海峡で、遠泳をサポートしようと、青森県中泊町などが「津軽海峡遠泳連盟」を設立した。伴走する船の手配などを通じて世界中のスイマーが挑戦できる環境を整えることでにぎわいを創出し、地域活性化につなげる狙いがある。
観光資源アピール
一般的なスタート地点とされる中泊町小泊地区の権現崎から泳ぎ始める場合、潮流の影響で北海道福島町付近にたどり着く。津軽海峡遠泳連盟によると、権現崎から福島町までは直線距離にして約30キロで、遠泳時間は平均約12時間という。潮流が複雑で速く、水温の変化も激しいことから、英国とフランスの間のドーバー海峡や、スペインとモロッコの間のジブラルタル海峡などとともに、遠泳による横断が難しい海峡の一つに数えられている。
中泊町は共に相撲が盛んな土地柄という共通点から福島町と交流を行い、昨年10月にスポーツや観光などに関する包括連携協定を締結。今年5月には津軽海峡遠泳を観光資源としてアピールするために津軽海峡遠泳協会の石井晴幸会長を遠泳アドバイザー、福島町の文化・スポーツ振興に携わっている宇田快(やすし)さんを交流アドバイザーに委嘱した。また、平成6年に女性として初めて津軽海峡の単独遠泳に成功した青森市出身の尾迫千恵子さんをPR大使に任命した。
来年度は8~12回サポートへ
津軽海峡で遠泳を希望するスイマーは世界中にいるが、伴走する船の手配、行政側への必要な手続きなどに関するサポートは不可欠。従来は津軽海峡遠泳協会がサポートの担い手となり、年間2人程度を支援してきたが、希望者に対して少ないのが課題となってきた。このため、同協会からサポート事業を引き継ぎ、充実させることなどを目的に今年8月に同連盟を立ち上げた。
同連盟には2人のアドバイザーのほか、中泊町の関係者、漁業者らで構成。波が穏やかで比較的、遠泳による横断の成功率が高いとされる6~7月の小潮の時期で好天の日に同連盟のサポートのもとで遠泳を実施する。来年度は8~12回のスイマーをサポートする予定で、体制が安定すれば人数を増やすことも検討する。津軽海峡遠泳の魅力を伝える周知活動として「津軽海峡交流フェスタ」(仮称)も計画している。
インバウンドの増加期待
海外スイマーとの連絡調整などを担う同連盟事務局の伊藤友香さんは「スイマーが津軽海峡を完泳できれば、中泊町を第二の故郷と感じてもらい、インバウンド(訪日外国人)の増加にもつながる」と期待を寄せる。
同連盟を立ち上げたことで中泊町は津軽海峡を世界に発信する好機ととらえるだけでなく、福島町との交流人口拡大の起爆剤にしたい考えだ。中泊町総合戦略課の吉田拓主査は「中泊町を遠泳の聖地としてPRし、町の活性化を図っていきたい」と話す。(福田徳行)