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うどんだけではない? 香川の新名物はラム酒、特産品「和三盆」製造過程で出る糖蜜を蒸留

産経ニュース 2024年7月5日 10時0分

香川県特産品の一つ、和三盆の製造過程で生じる糖蜜を原料にしたラム酒づくりに、徳島市の建築資材・施工会社が挑戦し、話題となっている。自社の蒸溜所も香川県東かがわ市内に完成し、7月中にも初仕込みに入る。JR高松駅の新駅ビル「高松オルネ」に和三盆ラムのスタンディングバーも出店。関係者らは「香川イコールラムというイメージがつくぐらいの新しい特産品にしたい」と意気込んでいる。

使いきれない糖蜜の活用

和三盆ラムの製造に取り組んでいるのは、徳島市と高松市に拠点がある美馬産業。文化元(1804)年に藍染め染料の卸売りとして創業し、2代目は建築資材販売、3代目は建築施工。4代目の美馬宏行社長(38)は「それぞれ新しく事業を広げてきた」と説明する。

東かがわ市で讃岐和三盆の伝統的な製法を守る「三谷製糖羽根さぬき本舗」とは姻戚関係にあり、平成28年に製造現場を見学した際、大量に出る糖蜜の使いきれない分が廃棄されると知った。お酒好きの美馬社長は「糖蜜を原料にラムがつくれるとピンときた。私の代の新規事業はこれだ」と決心したという。

当時は約6年勤めた会社を辞め、美馬産業に入ったばかり。酒造免許取得には膨大な手間がかかるため、「一日も早く世に出したい」と令和元年、取引先だった県内の酒造会社、西野金陵(琴平町)に製造を委託し、3年春頃から販売開始。4年春に自社製造を始める計画だったが、原材料費高騰の影響で蒸溜所の建設が大幅に遅れ、外国製の蒸留機の製造・納入もずれ込み、免許は今年4月にようやく取得できた。

蒸溜所を観光スポットに

ラムは、沖縄県を中心にした黒糖ラムをはじめ、ここ数年で急速に増え、30銘柄程度あるという。和三盆ラムは、糖蜜に雑味や苦み、えぐみがほとんどないため、さっぱり、すっきりとした飲み口、ほんのり優しい甘さ、香ばしい香りが特徴という。

今回、東かがわ市内に建設した「馬宿蒸溜所」の製造目標は年間1万1000リットルだ。糖蜜に酵母を入れて1週間程度発酵させた後、蒸留し、3カ月程度タンクで寝かせて味を落ち着かせ、ボトリングや熟成のための木樽詰めを行う。

熟成させると「ゴールドラム」や「ダークラム」に。ゴールドラムは今年中にもお目見えする。ラムベースの缶入りリキュール製造も視野に入れている。

「自社製造が始まりようやくスタートラインに立った」と美馬社長。今後、ガラス張りで作業の様子が見られたり、写真パネルや映像で和三盆の歴史やラムの製法を説明したり、試飲ができたりする観光交流スペースを整備する計画。美馬社長は、「工場見学で誘客し、蒸溜所は県東部の観光コンテンツとして地元の期待にも応えたい」と、意欲的だ。

駅ビルにスタンディングバー

高松オルネ北館1階には「ラムスタンドUMAYADO」もオープンした。建築施工を手がける会社だけに、緩やかな曲線状の白い石のカウンターやレンガ張りの壁面など、職人の手仕事によるこだわりの内装だ。

人気のモヒートやラムコーラなどの和三盆ラムベースのカクテルやクラフトコーラ、和三盆プリン、県内醸造所のクラフトビールなどを提供する。

おつまみは、隣接する「shikoku meguru marche(シコクメグルマルシェ)」で販売する四国各地の名産などの持ち込みOK。ビン入りの和三盆ラムや、糖蜜を原料につくったクラフトコーラの原液などがお土産用に購入できる。

高松オルネを運営するJR四国ステーション開発の担当者は「店舗誘致の担当者が徳島県内のバーテンダーから『面白いお酒がある』と紹介された。香川県に昼飲み、立ち飲みの文化をつくりたいという考えが根底にあり、ちょうど合致した」と開店の経緯を説明する。

利用者の6割以上は女性。電車待ちの客のほか、週末には観光客の姿も。ラムに親しんでもらうため、テイスティングセミナーなども開催している。よく来店するという高松市内の女性は「和三盆も好きだがお酒がつくれるとは知らなくて、すてきな試みだと思った」と話していた。(和田基宏)

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