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4代目は「ドクターホワイト」イエロー後継 500系も近く引退か 新幹線開業60年

産経ニュース 2024年6月28日 8時0分

日本経済の大動脈輸送を担う東海道・山陽新幹線で、安全運行の裏方として活躍を続けた検査専用車両「ドクターイエロー」が令和9年をめどに完全引退することが発表された。半世紀近く前に公開された邦画「幸せの黄色いハンカチ」の影響からか「見ると幸せになる」とも言われ、惜しむ声が相次ぐ。今年は東海道新幹線開業から60年。来年には山陽新幹線全線開業50年の節目を迎え、「往年の名車」が次々と寿命を迎えようとしている。

SNSに〝目撃情報〟

引退発表から丸一日が過ぎた今月14日夕のJR新大阪駅の新幹線ホーム。黄色いボディーにブルーのラインを引いた7両編成が滑り込むと、鉄道ファンが一斉にカメラのシャッターを切った。

ドクターイエローは10日に1回程度運行されるが、ダイヤは非公表。それでも〝目撃情報〟は交流サイト(SNS)を通じてファンの間で共有される。

授業後に駆けつけ、その雄姿をカメラに収めた大阪府高槻市の高校3年の男子生徒(17)は「幼稚園のころから親と一緒に写真を撮った。格好いい姿が間もなく見られなくなるのは寂しい」と肩を落とす。

検測機能はN700Sに

ドクターイエローは正式には新幹線電気軌道総合試験車と呼ばれ、営業車両の700系をベースにした923形。7人の検査員が専用機器でレールのゆがみや架線の摩耗などを検査する。1号車の中央にはモニターが整然と並び、架線の電流や保安装置の電気信号をチェック。データは保線現場に伝えられ、夜の保線作業などに活用されるのだという。

3代目となる現在のドクターイエロー923系(T4編成)は、平成13年9月から運用を開始した。17年に登場したJR西日本所属のT5編成と交互に東京-博多間約1100キロを最高時速270キロで走行するが、老朽化などを理由にJR東海は来年1月、JR西日本は令和9年度中にも引退させることを発表した。

ドクターイエローの検測機能は、8~10年度に導入する17編成のN700Sのうち、4編成に搭載。旅客用の車両を後継の「ドクター」として運用する形となる。

「ロングノーズ」も見納め?

山陽新幹線で航空機とのライバル競争に勝つことなどを目的にJR西が独自開発し、ロングノーズと呼ばれる先頭部の流線形が「近未来」的な500系も数年以内の引退がささやかれる。

平成9年にデビューし、最高時速はフランスの新幹線TGVに肩を並べる300キロ。「500系のぞみ」の愛称で東京-博多間を駆け抜けたものの、製造コストが高い上に座席定員が700系といったほかの車両と比べて少なく、運用面での難が目立った。

このため、22年にのぞみの運用を外れて「こだま」専用に。16両から8両に短くした上で山陽新幹線で走り続けた。

JR西によると、6編成のうち4編成が令和8年度末までに削減されることが決定。残る2編成の引退時期について公式発表はないが、引退ムードは高まりつつある。

ドクターイエローの撮影に新大阪駅を訪れた鉄道ファンの一人は「500系の完全引退も秒読み段階に入った。今のうちに撮っておかないと」と話していた。(岡嶋大城)

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