入学定員が進学希望者を超える「大学全入時代」が到来しつつある。18歳人口は減少傾向にある一方、大学入学定員は増える傾向にあり、競争はさらに緩和する流れだ。半数以上の私大が定員割れとなるなど、受験生にとっては年々、大学に合格しやすい環境になりつつある。
来年の令和7(2025)年入試は、新課程入試の初年度だ。河合塾によると、一般に制度の変わり目の受験生は慎重な大学選びをすることが多いが、今春入試ではあまり安全志向は見られず、志望校に果敢に挑戦する傾向があったという。ただ、第1志望を下げる傾向はなかったものの併願校を多めに受ける傾向はみられた。
5月に実施した第1回全統共通テスト模試での志望校の記入状況を分析したところ、今年の受験生も同様にチャレンジ志向が強いという。「国公立難関10大学でみても志願者は前年の103%」といい、挑戦志向がみられると分析していた。
学部別、分野別の志望状況でみると、国公立大では「歯」の志願者は前年の115%、「理」も110%と人気を集めている。
文系では「経済・経営・商」が105%、「文・人文」が104%と人気。新型コロナウイルス禍の影響で人気が低迷していた外国語学部や国際系、観光系の分野が復調している。
河合塾主席研究員の近藤治さんは、「コロナ禍では文系の人気が落ち込み文低理高という状況だったが、今春入試では文理均衡となり、来春は文系人気がさらに回復するのではないか」とみる。
一方、大学や学部の新設は、情報系、理工系での定員増が目立つといい「デジタル、グリーンがキーワード」。ただ、情報分野について近藤さんは「定員増のわりに人気も少し落ち着いている。倍率がさがるかもしれない」としていた。
近年では総合型選抜も増加。年内で入試を終える年内入試が増えており、私大だけでなく国公立も年内入試の定員枠を広げている。志願者も増えているが、近藤さんは「年内入試は楽だと思う人もいるがそうではない」と指摘する。
「特に国立大学などでは、丁寧な選抜をするところが多い。高校でどういったことに取り組んだのか。大学で何をどう学びたいかが明確かどうかがしっかりとみられる」という。総合型選抜を踏まえた個別の対策も必要だという。
また、新教科「情報」の導入もある大学入学共通テストの難易度については、「試験時間が長くなっている科目もあり、簡単になる要因が見つからない。思考力、判断力をじっくりと問われることになるだろう。難化すると考えた方が自然だ」と話していた。
近藤さんは受験生に対し「得意な科目や嫌いな科目で文理を決めたり、早く決めたいからと年内入試を選んだりする人がいるが、消去法ではなく、自分が譲れない条件を考え、行きたい大学をしっかりとめざしてほしい」と話していた。
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こんどう・おさむ 学校法人河合塾教育研究開発本部主席研究員。長年にわたり大学入試動向分析を担当。研究開発、学校サポート事業、塾生指導等に携わった後、令和3年より現職。生徒、保護者、高校教員対象の講演も多数実施している。