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イケメン消防士の救急講座、偏食上司に栄養士が喝 「バズる」尼崎市役所のインスタ成功術

産経ニュース 2024年10月7日 10時0分

兵庫県尼崎市の各部局がそれぞれ独自に展開している公式インスタグラム(インスタ)が「おもしろい」と話題になっている。イケメン消防隊員による救急講座、テレビ番組顔負けのグルメ情報、管理栄養士による上司の食生活改善プロジェクト…。いずれも「お堅いお役所」らしからぬやわらかさで、フォロワーは日々増加。市民に伝えたい情報を効果的に発信するのに貢献しているという。

イケメンすぎて…

「出血したときの止め方」-。画面にイケメン消防隊員の顔がアップで現れ、動画は始まる。

「正しい止血の方法を教えるから覚えといて」とささやき、「出血している部位にガーゼかタオルをあてて圧迫する」「傷口を心臓より高い位置に上げる」などと解説。最後に「どうしようもなかったら迷わず119番して。僕らが助けにいくから」と締める。

イケメン消防隊員は、動画作成も手掛ける市消防局救急課の救急指導担当、岸本宏平さん(37)。この動画のコメント欄には「岸本さんに見つめられているような気がして、ドキドキして話が入ってこなかった」「岸本さんが救助にきてくださったらドキドキしすぎて出血量が増えそう」といった女性のメッセージが寄せられている。

市消防局は令和4年11月にインスタを開設。救急救命法や地震・水害といった災害時の対処法などをテーマに週1回程度、動画を投稿している。「市の広報紙やホームページは見る人が少なく、特に若い世代へどのように情報を伝えるかが課題でした。SNSなら見てもらえるのではと考えました」と岸本さん。

いざというときに役立つさまざまな対処法のほか、「箸休め」(岸本さん)として、消防隊員による腹筋トレーニングやドラマのような出動シーンなどユニークな動画も。岸本さん以外にもイケメンや筋骨隆々の消防隊員が多数登場し、フォロワー数は6万2千人(10月1日現在)に。うち8割が女性という。

「まずは気軽な動画で興味を持ってもらい、ほかの動画にも目を向けていただければ」

知らずにフォロー

尼崎市内のグルメ情報を中心に紹介する「尼崎グルメ情報」もフォロワー数が1万3千人と人気だ。運営しているのは市の外郭団体、あまがさき観光局。市からの出向職員、吉川真理子さん(39)は「尼崎にはおいしい店が山ほどあります。市外からも人を呼べる魅力的なコンテンツです」と話す。

始めた5年前はフォロワー数が伸び悩み、取材を申し込んでも、反響が小さいことから断られることも多かったという。そこで外部のプロに委託したところ、まるでテレビのグルメ番組のようなしゃれた動画が女性らの心をとらえ、フォロワーが急増。今では店の方から「うちも取り上げてほしい」と依頼がくるほどになった。

「役所」を感じさせないところが魅力で、吉川さんの知人の中にも、「これ、市の関係のサイトだったの? 知らずにフォローしてたわ」という人が多いという。吉川さんはテレビやネットでたびたび取り上げられる大阪のグルメ街、天満や福島と並び立つことを目指し、「グルメといえば『天満、福島、尼崎』と呼ばれるよう尼崎の食を盛り上げたい」と意気込む。

自身のリアルをネタに

同市発信の話題のインスタはまだある。市保健所は5月から、女性の管理栄養士の「ナージャ」と「みっしぇる」が、独身で偏食の男性係長の昼食をチェックして、食生活を改善すべく指導する動画の配信を開始。フォロワーはまだ約700人ほどだが、着実にファンを増やしている。

「男性係長」は同保健所健康増進課係長の桂山智哉さん(38)。食事のバランスが悪い18~39歳の若年層向けに食育の啓発をすることになり、「私もその世代。そういわれると、自分もひどい食生活をしているなと思いました」。自身のリアルをネタに、「食生活改善プロジェクト」を若者層がよく見るSNSで展開することを思いついた。

具なしの雑穀米おにぎりのみの弁当を2人の管理栄養士から「これではエネルギーが足りない」「栄養担当の係長なのに」と突っ込まれた係長が翌日、具に大量の塩昆布を入れたおにぎりを持ってくると、「塩分多すぎやろ」「何考えてんねん!」とハリセンでたたかれる。ノリで巻いたり、具を変えたり、おかずを一品つけたり、と係長の弁当は少しずつ改善していく…というストーリー仕立てになっている。

「1年かけて展開します。食生活と体調がどう改善されるか、自分でも楽しみです」と桂山さん。

いつかはコラボも

話題のインスタが登場する背景には、職員らの柔軟な発想もさることながら、部下からの提案に対し上司がおおらかであることも大きい。桂山さんは「尼崎は、新しいことに対するアレルギー反応がよそより少ないと思います。説明したら納得して、後押ししてくれました」と話す。

また、担当者らは部署は違えど意識しあっているようで、岸本さんは「時々、よそのインスタをチェックしています」。吉川さんは「いずれはコラボもしてみたい」と明かした。

同市の松本真市長は「私も時々、インスタを見ているが、市民の皆さまに知っていただきたいという職員の思いや意欲を感じるものばかりで、ほほえましく思っている」とし、「さまざまな工夫をして施策の推進を図ろうとする職員がたくさんいることは尼崎市役所の最大の強み。これからも、各課から、たくさんの魅力的な情報が発信されることを、楽しみにしている」とコメントしている。(古野英明)

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