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助産院に産後ママくつろげるカフェラウンジ ネスレ日本がカフェインレスのコーヒーで協力

産経ニュース 2024年7月25日 9時0分

コーヒー大手のネスレ日本(神戸市)が産後ケア施設にコーヒーメーカーを設置する取り組みを全国で進めている。5月には奈良県生駒市の助産院に設置し、妊婦や授乳期の母親でも安心して飲めるカフェインレスコーヒーを提供。核家族化で育児における母親の孤立が問題視されている中で気軽に立ち寄ってもらいたい考えだ。

産後鬱で感じた孤独

5月に開業した生駒市の「葉ノ月助産院」は、2階建て延べ床面積約215平方メートルで、1階にはカフェラウンジを併設。妊産婦が家族やママ友たちと気軽にカフェタイムを楽しむことができる。カフェのみの利用は生後1年未満の子供とその保護者らが対象で、大人1人当たり1時間500円。

生後間もない息子とともに訪れた生駒市の会社員、古川洋江さん(33)は、「子供はいつ泣き出すかわからないので、赤ちゃん連れでカフェでお茶なんてなかなかできない。同年代のお母さん方と交流できるのが楽しみ」と笑顔を浮かべる。

きっかけは、助産師で看護師の資格も持つ山本真貴子院長(38)自身の経験だ。第2子出産後に感情のコントロールがうまくできなくなり、産後鬱の状態に悩まされた。山本さんによると、産後鬱は休息と、会話する人が身近にいることで改善される。だが、核家族化が進んだことや新型コロナウイルスが感染拡大した影響もあり、妊産婦は孤立化しやすくなっているという。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが全国1900人の産婦から回答を得た平成30年の調査研究では、第1子を出産後の2~8週目の悩みとして、「十分な睡眠がとれない」(59・5%)▽「自分の時間がない」(44・4%)▽「孤独だと感じる」(15・5%)-などが挙がっている。

こうした状況を踏まえ、「子育て中に孤独に悩まされず、日常の中で、ほんの少しの間でもゆったりする時間が楽しめる産後ケア施設の必要性を感じた」と山本さん。クラウドファンディングで資金を募り、助産院の立ち上げを計画。もともとカフェ巡りが趣味だったことから、「おいしいコーヒーがゆっくり飲めるスペース」を作ろうと、ネスレ日本に協力を求めた。

コーヒーで一息を

ネスレ日本は、自社ブランドのカフェインレスコーヒーを愛飲している母親たちへの調査をしたところ、「気分転換したい」「誰かと話したい」というニーズがあったことが分かり、産後ケア施設に着目。令和3年10月以降、沖縄県浦添市、鳥取県米子市、群馬県高崎市の施設で、コーヒーメーカーとカフェインレスコーヒーの提供を行ってきた。コーヒーメーカーの設置と粉は初回のみ無償だが、2回目以降は販売している。

最初にネスレ日本と共同でラウンジ併設助産院を開設した「ゼロプレイス」(沖縄県浦添市)の島袋創平代表は「妊産婦の方から『ゆっくりできるし、ラウンジでコーヒーを飲みながら育児の相談もできる』と喜んでもらっています」と手応えを話す。

4カ所目となる葉ノ月助産院でもリピート率が高く、2~3週間先の予約も埋まってしまうほどの好評ぶり。山本さんは「産後のお母さん方には施設を利用されているときだけでもゆっくりと、ママ同士の交流を楽しんでもらいたい」。深谷龍彦・ネスレ日本社長は「産後は特にナーバスになる人が多い。そんな忙しい毎日の中で息をつける時間をコーヒーを通して、今後も提供していきたい」と話している。(木村郁子)

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