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安土桃山の刀や鍔など1億円相当、名刀「山姥切国広」譲渡に合わせ刀装具寄付 栃木・足利

産経ニュース 2024年10月9日 11時0分

栃木県足利市が今年3月に市ゆかりの名刀「山姥切(やまんばぎり)国広」(国指定重要文化財)を取得する際、所有者から貴重な短刀や鍔、さやなどの刀装具の寄付を受けていたことが関係者らへの取材でわかった。市教育委員会に事務局を置く公益財団法人「足利市民文化財団」が寄付を受け入れた。刀装具全体の評価額は約1億円に上るという。

ブームに乗り、展示会来場者計6万人

「山姥切国広」は、安土桃山時代の天正18(1590)年、足利領主の長尾顕長の依頼で刀鍛冶・堀川国広が作刀した。長さ約70センチ、反り約3センチ。国広の最高傑作といわれる。

市では「山姥切国広」を所有者から借り受け、平成29年と令和4年に市立美術館で展示会を開催。刀剣を擬人化したオンラインゲーム「刀剣乱舞」による刀剣ブームの中、大きな反響を呼び、来場者は2回合わせて約6万人。市が算出した経済波及効果は9億円に上った。

この展示会を機に市との交流を深めた所有者から「山姥切国広」を譲渡したいとの申し出を受け、市が取得した。評価額は3億円で2億円を市民文化財団が負担し、残る1億円をクラウドファンディング(CF)を行い、調達した。

「歴史のまち」活性化へ

「山姥切国広」の取得に合わせ所有者から寄付の申し入れがあったのが、日本刀と刀装具。国広の短刀、「山姥切国広」のさやなどの刀装具、安土桃山時代の名工・信家の鍔、槍(やり)や薙刀など100点以上に上る。

このうち短刀は国広の初期の作品で長さ23センチ。銘には「國廣」の2文字が刻まれている。過去2回の展示会で「山姥切国広」とともに公開されている。国広が天正期に鍛えた特徴が出ていて、刃文などが南北朝時代の刀工・左文字(さもんじ)らの作風を漂わせている。国広の短刀では最高傑作とされ評価額は2千万円以上。

今後、市では寄付を受けた短刀や鍔、さやなどの刀装具の公開を検討しており刀剣ブームを追い風に「歴史」のまち足利の活性化につなげたいという。

なお足利市では「山姥切国広」と同刀の写しの元とされる国重文の「本作長義」(ほんさくながよし)(徳川美術館所蔵)を来年2月8日から市立美術館で特別公開する。

「本作長義」は南北朝時代に備前長船の刀工・長義が鍛えた刀で、「山姥切国広」はこの刀の写しとして国広が作刀したとされる。写しの元となった原作と写しがともに重文に指定されているのは国内で唯一の事例。両刀の同時展示は平成9年に東京国立博物館で開催された「日本のかたな」展以来、28年ぶり。市では寄付を受けた短刀などの展示も検討している。(伊沢利幸)

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